睡眠時無呼吸症候群 さまざまな症状出現

睡眠時無呼吸症候群は、
30年ほど前から知られるようになった睡眠の病気の一つである。
2003年、山陽新幹線の運転士が、
270㌔のスピードを出したまま運転中に居眠りした事故は記憶に新しい。
この病気は眠気以外にも、
さまざまな症状が現れる。

主婦の金井さん(57)仮名は、
数年前から元気をなくしてしまった。
日中眠くて、ご飯を食べると、うとうとすることも多く、
うつうつした気分で何をしても面白く感じられない。
心療内科を受診したところ、
軽度のうつ病といわれ、抗うつ薬を1年間服用したが、
症状は改善しなかった。
そのころ偶然、
病院内で睡眠外来の看板を見て受診した。

検査をしたところ、
睡眠中に呼吸が止まっていることが判明。
鼻から空気を送り、その圧力で狭くなった気道を広げ、
呼吸が止まらないようにするシーパップ治療を始めた。
「シーパップ使用後は、熟睡できるようになり、
日中の眠気がなくなりました。
前向きに何でもやってみようかという気持ちにもなりました。
朝起きたときから何をしようかと楽しいです。
毎日マスクをつけて寝るのは嫌ですが、
あのうつうつした気持ちがなくなることを思うと、我慢できます」
と金井さんは喜んでいた。

営業職の堀田さん(46)=同=は、
体重が半年で100㌔から110㌔に増え、
血圧も130だったものが180と高くなってしまった。
いびきは前からひどいといわれていたが、
最近ではそのいびきがピタッと急に静かになり、
その後数十秒してガーと息をするようになっているといわれた。

夜間トイレにたびたび行くようになり、
知らないうちにおもらしをしていたこともあった。
泌尿器科を受診して前立腺の検査を受けたが、
特に問題は見つからなかった。
また、高速道路を運転している際に眠くなって、
幸い事故にはならなかったがヒヤッとすることが何回もあった。
今話題の睡眠時無呼吸症候群かもしれないからという妻の強い勧めで、
睡眠外来を受診した。

鼻やのどの診察とエックス線写真、
一泊して睡眠中の呼吸と脳波を記録する検査を行った。
その結果、
寝ているときに300回以上も呼吸が止まり(通常は35回以下)、
体の中の酸素濃度が60%まで低下(通常は95%)していることが分かった。

症状改善のためには減量が必要なケースだが、
まずはシーパップ治療を開始した。
シーパップを始めたその夜からトイレにまったく行かなくなった。
ぐっすり眠れるようになり朝の頭重感がなくなった。
血圧も低下し、昼間の眠気も解消して元気になった。

 

出典:宮崎総一郎 「眠りの不思議21」 『秋田魁新報』 2009年7月6日


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