睡眠中、息が止まる

睡眠中に呼吸に異常を来す疾患を睡眠呼吸障害と呼びます。
その中でも最も多いのが閉塞型睡眠時無呼吸症候群です。

無呼吸とは十秒以上、息が止まることです。
二分以上止まることもあります。
閉塞型とは胸や横隔膜は呼吸運動をしているのに
口蓋垂(のどちんこ)や舌の後ろ(舌根)の緊張が低下して、
のどを塞いでしまう状態です。
首を絞められた状態に似ています。

完全にふさがれると無呼吸になりますが、不完全だといびきになります。
無呼吸により液中の酸素が低下し、炭酸ガスが上がります。
酸素欠乏を毎晩繰り返すと交感神経の緊張で高血圧が起こりやすくなります。
高血圧とともに心筋梗塞や脳血管障害も健常人より数倍多く、
死亡率も高くなります。
炭酸ガスの増加で呼吸中枢が刺激され脳が覚醒し、呼吸を再開させます。
いびきをして寝ているように見えても、脳は数秒間繰り返し起きているわけです。
一晩に数百回覚醒することもあります。
このため睡眠の質が悪化し昼に強い眠気、日中過眠を超こします。

日中過眠は交通事故や産業事故の原因となり、
個人の健康だけでなく新幹線の居眠り運転事故のような社会問題ともなっています。
また、血中炭酸ガスの上昇は脳の血管を拡張し、朝の頭痛を超こします。

閉塞型無呼吸では水分調整のホルモンの異常も出現し
体のむくみや夜間の頻尿も見られます。
罹病率は男性に多く年齢とともに増える傾向にあります。
肥満の人に多いですが日本人ではその三割は肥満ではありません。
アジア人ではやせ裂の無呼吸も少なくありません。
人種別の罹患率では黒人が最も高く、ヒスパニック、白人の順に下がります。

診断はいびき、日中過眠を中心に前述した症状に気をつければ容易です。
診断の確定や重症度の判定に睡眠ポリグラフィー(PSG)を実施します。
治療は軽症では横向きで寝る、口を閉じて寝る、
歯科装置で下あごを少し前にするなどがあります。
中等症以上では睡眠中にマスクを通して鼻から空気で圧を加えて
気道が閉まらないようにする持続陽圧呼吸療法(CPAP、シーパップと呼びます)
で治療します。

CPAP治療は継続すると自覚症状、高血圧や死亡率が改善しますが、
七割程変の患者さんしか成功していません。
扁桃肥大などがあると手術をすることもありますが、
小児に比べて成人の手術例は多くはありません。

 

n.r23

 

出典:名嘉村 博 「良い眠り 良い人生 23」 『琉球新報』 2008年10月20日


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