望ましくない「寝ぼけ」

睡眠に伴っておこる望ましくない現象を睡眠随伴症(寝ぼけ)と呼びます。
よく見られるのがノンレム睡眠で起こる
覚醒時錯乱、睡眠遊行(夢遊病)、夜驚症です。
特徴として
①睡眠前半の深い睡眠から急に覚醒するときに出現する
②覚醒が不完全で意識が鮮明でなく本人は何をしたか覚えてない
③子供に多く、成長するにつれ改善・消失する傾向がある
などです。
しかし成人では治療を要することもあります。

覚醒時錯乱は起きがけに、
一時的にわけのわからないしぐさをしたり寝言をしたりする状態です。
家族内発生や遺伝的素因があります。

睡眠遊行とは眠りながら歩くという意味です。
目は開いていますが、うつろでぼんやりとしています。
時には寝言を言いながら走ることもあります。
成人の男性ではまれに暴力を振るうこともあり、
極端な例では殺人など司法上の問題となるケースもあります。

夜驚症は子供によくみられ、
恐怖の表情で急に起きて泣いたり金切り声を上げたりする状態です。
意識はもうろうとし日中の恐怖反応と同じように脈が増え、
発汗や筋緊張も見られます。
親を驚かせ不安にさせますが大事に至ることは稀です。

次にレム睡眠中に超こる
悪夢障害、睡眠麻痺(金縛り)、レム睡眠行動障害などがあります。
悪夢障害では悪夢が頻回にあり、
覚醒後も内容をかなり鮮明に覚えていて強い不安や恐怖を伴います。
金縛りは寝がけや起掛けにおこり、意識は明瞭ですが動けない状態です。
多くの人が一度は経験する状態で、
ナルコレプシーなどの疾患がなければ治療を要することは稀です。

レム睡眠行動異常症は、
覚醒時は異常なく普通ですが睡眠時レム期で見られる筋弛緩が抑制されるため、
夢の内容が行動化し暴力的で危険な行為を示す疾患です。
夢は知らない人や動物に襲われたりする内容が多く、
それから逃げたり防御するために殴ったりけったりする動作をします。
窓ガラスを割ったりいすを投げたりすることもあります。
自身や傍で寝ている他人をけがさせたりします。
夜驚症と違い自は閉じていて、
本人は夢の内容は覚えていても何をしたかは覚えていないようです。
五十歳以降の男性に多く、
パーキンソン病などの前ぶれの症状とする研究もあります。
精神科疾患と誤解されることもあります。
特効薬もありますが、あまり知られてないため診断が遅れる傾向にあります。

 

出典:名嘉村 博 「良い眠り 良い人生 26」 『琉球新報』 2008年11月17日


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