生息環境で睡眠時間に差

動物の睡眠時間は長短さまざまで、寝相や睡眠の様式も異なります。
馬やキリン、象など草食動物の一日の睡眠時間は3~4時間と短く、
ライオンやトラなど肉食動物は14~16時間と長い傾向にあります。

草食動物は栄養の少ない草を食べるので、食べることに時間を費やし、
自然の草原では肉食動物に襲われる危険も高いことから、寝る時間が短くなります。
肉食動物は、最初から肉でカロリーの高いタンパク質をとり、
襲われる危険も少ないので長く寝ることができます。
羊でも、タンパク質を多く与えると、レム睡眼が増えるといいます。

レム睡眠は筋肉に力が入らず、逃げることが最も困難な状態になります。
肉食動物は草食動物に比べ、レム睡眠が多いのですが、
これは他の動物の餌食になる危険性が低いからと考えられます。

同じ動物でも、襲われる危険が高い場所では睡眠時間は少なくなります。
動物園やサーカス、あるいは家畜化し、
決まった畜舎などの安全なところでは長くなるようです。

高カロリーの食事をして満足すると眠気がしてきますが、
これは脳の視床下部という部位で睡眠と食事を調節する部位が隣り合っているためのようです。
牛や羊など、一部の草食動物には、
レムやノンレム睡眠とは異なる「うとうと状態」があります。
これは起きているとも眠っているとも言えなく、
覚醒と非常に浅いノンレムを行ったり来たりしている状態です。
うとうと状態は草を食べることができ、レム睡眠がないので襲われた時に逃げやすくなります。
睡眠不足を補う作用もあるようです。

牛の飼料を、干し草から栄養の良い飼料に変えると、うとうと状態は減り、
明確な覚醒と睡眠に変化します。

ゴリラは平均12時間と、霊長類では最も長く眠ります。
人間は平均7~8時間で、
サルやゴリラなど類人猿を含む霊長類では睡眠時間が最も短くなっています。

人間は知能の発達により、他の動と違い、
唯一自分で睡眠時間の調一整が可能になりました。
文明は発展しましたが、睡眠不足や睡眠障害、産業事故なども生み出しています。

睡眠の量と質は食べ物、生息環境、
寝る場所の安全性や知能の発達と密接に関係していることが分かります。

 

20時間コウモリナマケモノ
18時間アルマジロ
16時間ホツキヨクジリス
14時間ネコハムスター
12時間ゴリラキツネオオカミ
10時間ヒョウモグラハリネズミ
8時間ヒトウサギ豚
6時間ハイイロアザラシ
4時間牛ゾウ羊
3時間馬キリンロパ

出典:名嘉村 博 「良い眠り 良い人生 6」 『琉球新報』 2008年6月3日

 


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