高血圧をもたらす不眠

私の友人、ロバートのお話の続きです。
ロバートがある日、ひどい下痢になりました。
下痢のために体重が五㌔以上減りました、
ロバートは長年高血圧の薬を飲んでいましたが、
下痢を境に、収縮期血圧が十㍉以上、下がりました。

体重減少で血圧が改善したのかと考えましたが、
下痢がなおり、
体重が元に戻った後も血圧は下がったままでした。
血圧が下がったままなのは、なぜでしょう。
以前と異なっている点と言えば、
コーヒーを止めたままだったのです。

コーヒーを飲まなくなって、寝つきが良くなり、
朝の目覚めが爽やかになったことに
ロバートは気づきました。
コーヒーに含まれるカフェインは、
人を覚醒させる作用があります。
一方、多量のカフェインは入眠を遅らせ、
睡眠時間を減らし、
中途覚醒を増やします。その結果、浅い眠りが増えて深い睡眠が減ります。
カフェインの副作用で睡眠が障害され、良い眠りが取れないために交感神経が緊張し、
高血圧になっていたのではないかと推測されます。

高血圧は肥満が原因と言われていますが、
実はその背景に睡眠が関係していることがわかってきました。

高血圧の人には不眠が多く(30~50%)、
また不眠が高血圧をもたらすことがわかっています。

また別の研究では、
糖尿病を合併した高血圧の患者さんに睡眠薬を投与したところ、
睡眠薬を投与されなかった患者さんに比べて、
明らかに睡眠が改善(中途覚醒の回数減少)し、
血圧の下がった患者さんが多くなりました。
睡眠が良くなると血圧が下がるのです。

ロバートの場合は、コーヒーを飲まなくなったことでよい睡眠が取れるようになり、
血圧が下がったと考えられます。

実はロバートのかかりつけ医も、コーヒーを止めたところ血圧が低下したとのことです。
最初はロバートがコーヒーを止めて
血圧が下がったことをまったく信用してなかったのですが。

高血圧の原因がコーヒーだとはいえませんが、
コーヒーに含まれるカフェインが睡眠を妨げて、
結果として血圧が高くなることもあるので、
適度にカフェイン飲料を楽しむことが大切です。

 

出典:宮崎総一郎 「快眠ライフのために⑬」 『京都新聞』 2008年6月24日


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