脳の働き高める工夫を

睡眠は加齢とともに変化します。
成人はノンレム睡眠から始まり、一時間程度でレム睡眠が出現します。
一晩のうち、九十分間隔で数回この睡眠サイクルを繰り返します。
胎児や新生児では、成人のように、 明確にレムとノンレム睡眠に区別できないこともあります。

レム睡眠は受胎後三十週で現れ始め、四十週でピークに達します。
新生児ではおよそ50%~70%がレム睡眠ですが、
生後六カ月では約30%に低下し、成人では20%以下となります。
ノンレム睡眠は生後二~六カ月に出現し、成人と同じ睡眠サイクルとなるのは、
脳の構造や機能がほぼ完成する五~十歳以降です。
人間の自我が芽生え、意思決定ができるようになるのもこの年齢で、
睡眠と脳の発達の相互作用が明らかです。
脳の発達が最も活発な胎児期や新生児期で多いレム睡眠は、
脳の発達を促していると考えられています。

成人後もレム睡眠の劃合は比較的変わらず、
学習や記憶の促進と密接に関係します。
発達遅滞児はレム睡眠の量が健常児よりも少なく、
知能の高い子供はレム睡眠が多いという研究もあります。

睡眠の深さをみると、子供ほど睡眠前半のノンレム睡眠の中の深睡眠量が多く、
高齢になるに従い、ほとんど浅睡眠だけになります。
発育盛りの子供が起こしづらいのは、深睡眠の量が多く、質が良好だからです。

睡眠サイクルは二歳以下の子供で成人より短く、
特に新生児は一回ごとの睡眠が四十~六十分で、小刻みに何回も寝ます。
一日合計睡眠時間はおよそ十六時間にもなります。
これを多相性の睡眠と呼びます。
成人するに従い、総睡眠時間は短くなり、
十一時ごろから六時ごろまで寝る単相性の睡眠となります。

高齢になると、早寝早起きの傾向となり、
昼寝が増え、再び多相性の睡眠となります。
そのため何回も目が覚める傾向になります。
これは脳の老化の影響もありますが、
不眠を起こす神経疾患などの影響も考慮する必要があります。
不眠を起こす疾患は年齢とともに増加するからです。
また、高齢者の睡眠は個人差が大きいのも特徴です。

睡眠が加齢とともに変化するのは、
睡眠が脳の発達により作られ維持されていることを示しています。
良い睡眠をとるには、 常日ごろから脳の働きを高めるような生活や工夫が必要です。

出典:名嘉村 博 「良い眠り 良い人生 11」 『琉球新報』 2008年7月8日

 


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