子どものいびき 発育などに悪影響も

和歌山県に住む真明君(6)仮名の、
母親から何度か相談の手紙をいただいた。
その内容をここで紹介したい。

〈受診前〉
真明はこの春から1年生です。
生まれつき胸の陥没があり、漏斗胸と診断されました。
へんとうが大きく、
寝ているときはいつも口呼吸をし、
時々数秒間の無呼吸状態になります。
成長も他の兄弟に比べてかなり遅い
(身長110㌢、体重18㌔で5歳児ぐらいの平均しかない)
ことなど考えると、
へんとう肥大も漏斗胸もお互いに因果関係があるのではと思えるのです。
体も弱く、1年で保育所を50日余りお休みしました。
また、怒りっぽくよく兄弟げんかをします。
このまま小学校に入って元気に大きくなっていくのだろうかと不安になります。

〈耳鼻科受診後〉
診察の結果、へんとう肥大で、
ややアデノイドも大きいこと、ぜんそくがあることなどから、
切除を勧められました。
睡眠時の口呼吸、無呼吸状態などをモニターを付けて一晩検査し、
ビデオで睡眠時の呼吸の様子を撮影しました。
いびきをかきながら、のどと漏斗胸の所がヘこむのを見て、
やはり負担がかかっているのだと思いました。

〈手術後〉
切除手術後は、家族の誰もが「手術してよかったね」
と言うほど、元気になり、
夜中も息をしているのかしら?と心配するほど静かに寝ていますし、
漏斗胸の所に手を置いてみても負担がかかっていないのがよく分かります。
何より、毎日していたおねしょをしなくなりました。
学校の先生も給食の食べっぷりに驚いています。
よく眠れるせいでしょうか、
いらいらもなくなりとても明るくなりました。

いびきのひどい子どもは目覚めが遅く朝無理に起こさなければならない、
2時間以上の長い昼寝をする、
夜眠る時刻が遅い、
夜中に何度も目を覚ます、
おねしょなどの症状が出る、
昼間は元気がなく、すぐ怒ったり攻撃的になる
など、
さまざまな問題を抱えていることが多い。
呼吸障害のために良い睡眠が取れないことが原因である。
適切ないびき治療により、
早い時間に自然に目を覚まし、
日中は昼寝することなく遊ぶようになり、
夜は疲れて早い時間に自然に眠るようになる。
おねしょもしなくなり、
明るく元気な子どもになる。

心配な人は近くの耳鼻科、
もしくは睡眠外来に相談を。
その際、いびきをかいている子どもの様子をビデオに撮り、
医師に見せれば、診察の役に立つだろう。

 

出典:宮崎総一郎 「眠りの不思議20」 『秋田魁新報』 2009年6月29日


カテゴリー: 附属病院 【講義リスト】