不眠改善 原因は意外と身近に

わたしの秋田の友人、
斎藤さん(66)仮名から以下のような手紙が寄せられた。

月曜日のコラム楽しみにしております。
[カフェイン 入眠遅らせ脳を刺激」のカフェインの話は、
自分もコーヒーが好きなのでなるほどと思いました。
今まで、自分は「血圧が低く、朝に弱い」
「眠りが浅くて、八時間は睡眠を取らないと」と言っていました。
いつも午後11時すぎに寝て、朝7時には起きます。
就寝中にトイレに起きる回数が一、二回はあり(平均一.六回ぐらい)、
熟睡感がありませんでした。
寝付きは良いのですが、
一回目に起きるのは、だいたい午前1時から2時の間でした。
前立腺系統が弱いのかなと思っていました。

しかし、スポーツをした後は、疲れてぐっすり寝ていることがあるので、
今回自動車に頼らず、努めて体を動かし、
睡眠が改善するか一週間試してみました。
コーヒーの量も減らし、飲む時間を午前中か、午後の早い時間にしました。

その結果、夜起きる回数が減り、
たとえ起きても深夜ではなく早朝になりました。
コーヒーを控え、運動した効果があったと思っています。
これからも、健康のために運動と食事(夕食を少なめに)に注意して
熟睡を心掛けようと思っています。

斎藤さんの例は、
コーヒーの量を減らし夕方に飲まないようにしたこと、
適度の運動をしたことが中途覚せい数を減らし、
熟睡感が得られた要因と推測できる。
コーヒーの睡眠への影響はすでに紹介したが、
日中の適度な運動は、睡眠を促進する。
「いつもより体を動かした日は、よく眠れた」
ということは、皆さんも経験しているであろう。

しかし、就寝前にエクササイズのDVDを見ながら運動をした私の知人は、
その夜、寝付けなくなっていた。
ヒトの体温のリズムは朝から徐々に上昇し、
夕方4時ごろから眠る前に一日で最も高くなる。
その後、眠気が増大し、体温の下降とともに眠りにつく。
これがヒトの眠りの準備である。
夜間に激しい運動をすると、交感神経が刺激され、眠気がなくなり、
体温は低下するどころか上昇してしまう。
結果、体温が下がって眠くなるのに時間を要し、
寝付く時刻が遅くなってしまう。

健康増進のため、仕事帰りにスポーツジムに通う人もいるだろうが、
時間帯によっては睡眠を悪くする場合があるので注意が必要である。

今回の、斎藤さんのようなケースを
「睡眠衛生が改善した」という。
眠れない原因は意外と身近にあり、
また睡眠知識があるだけでこのように簡単に対処できることが少なからずある。
このコラムをヒントに睡眠衛生が改善されれば幸いである。

 

出典:宮崎総一郎 「眠りの不思議15」 『秋田魁新報』 2009年5月18日


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