体動かし「眠らねば」脱却を

秋田県のおはこ寿司のマスターがちかごろ眠れなくて困っています。
おいしい寿司を提供するために魚をたくさん仕入れても、
お客さんの出足が少ないからです。
くよくよしてもしょうがないと、
マスターは前向きに考えました。
昼の空いた時間、
近くの山にわらびやうどを採りに出かけるようにしました。
そうすると夜は適度に疲れて、
知らない間に眠れるようになっていました。

悩み事があるときや-ストレスを抱えているときに
眠れなくなることは、誰でも経験していることです。
しかし、眠れないということを心配しすぎると、
今夜こそは眠ろうと思うあまり、
あやまった対処行動をとってしまうことがあります。
そうすると、逆に心身の緊張感を高め、
不眠をこじらせてしまいかねません。
眠りに対して気にしすぎないことが、
かえって眠れることにつながります。

適切な睡眠時間は人それぞれです。
3時間睡眠でも十分だったナポレオンのような人もいれば、
10時間眼らないと寝不足だったアインシュタインのような人もいます。
年をとると生理的に睡眠時間は短くなりますし、
季節によっても、夏は短く、冬は長くと、
睡眠時間は変化します。
昼間眠くなければ、必要な睡眠はとれていると考えると良いでしょう。
「健康のために8時間ぐっすり眠らないといけない」
という思いこみから離れましょう。

眠れなくて睡眠不足だから早く寝よう、
と意気込んで早い時刻から寝床に入る人がいます。
しかし、そんな早い時刻から眠れるものでもありません。
また、体内時計の働きによって、
前日に眠った時刻の2~4時間前の時刻は
一日中で一番眠くない時刻であることが分かっています。

眠れないまま布団の中で、
どうして眠れないのか、
どうしたら眠れるようになるのか、
と思っているとかえって眠れなくなります。
少し眠気が出てきたと感じるくらいの時刻に布団に入るようにしましょう。

睡眠薬がわりの寝酒は、
むしろ深い睡眠を阻害し、
夜中に目覚める原因となります。
また、お酒は常習性が強く、
どんどん量が増えていくおそれがあります。
寝酒よりも、肩や腰のストレッチをしたり、
睡眠薬を服用してはいかがでしょうか。

 

出典:宮崎総一郎 「快眠ライフのために⑭」 『京都新聞』 2008年7月1日


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