私たちはなぜ眠るのでしょうか。
答えは「明日に、よりよく活動する」ためです。
コンピュータを酷使すると、本体が熱くなって処理スピードが遅くなったり、
フリーズしたりしますね。
睡眠がうまくとれないと脳機能が低下し、正常な判断ができなくなります。
さらに、睡眠不足のときにはイライラしたり、やる気がなくなります。
アメリカの高校生が1964年に何時間寝ないでいられるか、
睡眠専門医の立ち合いの下に、世界記録に挑戦しました。
その結果、264時間12分起きていましたが、
最後はふらふらで幻が見えたりして、頭はまったく働きませんでした。
挑戦後、たった14時間40分ぐっすり眠っただけで、正常に回復しました。
睡眠による回復能力はすばらしいですね。
朝起きれない
24歳の直子さん(仮名)は、事務の仕事をしていますが、毎朝起きることができません。
7時には無理に起きるのですが、体は眠ったままでまったく動きません。
日中でも、布団に入ったらすぐに寝てしまいそうです。
仕事に差し支えるほど眠いので、病院の睡眠外来で相談しました。
先生からは、寝た時間、起きた時間、眠気の程度を紙に書いてくるように言われました。
1ヶ月後、睡眠日誌をみた先生は「あなたの病名は睡眠不足症候群です。
休みの日には、普段より2時間以上も長く寝ているでしょう。
これは本当の病気ではなく睡眠時間が足りてないだけです。
眠りが十分でないので、昼に眠気をきたすのです。
十分な睡眠時間をとると良くなります」と説明されました。
しかし、直子さんは、夜にはテレビも見たいし、
家事もあるので早くベッドに入ることができないでいました。
ある日、交通事故に遭いました。
ショックで会社を休み、4日間ずっと家で寝ていました。
5日目に仕事に行きましたが、不思議なことに仕事中ちっとも眠くなりません。
そのことを先生に話すとこう言いました。
「言ったとおりでしょう!
あなたは慢性の睡眠不足だったので、4日間たっぷり眠ったことで、
睡眠負債(睡眠不足の蓄積を意味します)がなくなり眠気がなくなったのですよ」
7時間を目安に
直子さんのような場合を、「睡眠不足症候群」と呼びます。
必要な睡眠時間をとらないことで、睡眠不足の影響が眠気やイライラ、集中力低下となり、
ひいては事故の原因となります。
この病気?はまじめな若い男性サラリーマンに多いといわれますが、
主婦から中年男性まで広い年代で見受けられます。
通勤時間が長いことで、この睡眠不足症候群になる方も結構います。
理想的には、毎日8時間15分ぐらい眠るとこの睡眠負債がまったくなくなります。
しかし、実際には少し睡眠不足のほうが寝付きもよく熟睡感があります。
睡眠時間は人それぞれですが、一般的には7時間程度をめやすにしてください。
どこでもすぐ眠れるというのは、実は睡眠不足の裏返しなのです。
事故のあとでも直子さんは、
「仕事して帰ってきてすぐに寝るなんて、人生損していると思いませんか」と話していました。
現代社会では、ともすれば睡眠が軽視されがちです。
すこしくらいの睡眠不足はすぐには健康に影響しません。
しかし、長い間、睡眠不足でいると、事故にあったり、生活習慣病や、
うつ病になるリスクが高まります。
睡眠負債をため込むと、最後にはその重さで、大きなつけを支払うことになってしまいます。
「出典:宮崎総一郎 『全国商工新聞 』2012年6月25日」