肥満の原因に睡眠不足

京都のビデオスタジオで、
メーキャップを担当しているサヤカさんのお話です。

「この仕事を始めて二カ月です。
食欲がとてもあって困っています。
この二カ月で3㌔以上太ってしまいました。
顔のあたりが、ふくらんできたので太ってきたことが良くわかります。
以前はあまり食べなかったチョコレートを食べるようになりました。
この仕事は、朝早く、夜遅くなることが多いので
今の睡眠時間は5時聞から6時間です。
この仕事に就く前は、7時間から8時間寝ていたのですが・・・」

今まで肥満は食べ過ぎや運動不足が原因といわれてきましたが、
実はその背景に睡眠が関係していることがわかってきました。

20代の健康な男性を対象にして、
睡眠時間を一日4時間と10時間の場合で睡眠不足の影響をしらべてみました。
その結果一日に4時間の睡眠にすると10時間睡眠にくらべて、
脂肪細胞から分泌されるレプチン
(このホルモンは、食欲を抑制し、代謝を促進します)
の血中濃度が18%減小し、胃から分泌されるグレリン
(このホルモンは、空腹やストレスの時に増加して、食欲を亢進します)
の血中濃度が28%増えていました。
睡眠時間の制限だけで食欲を抑制するレプチンが減り、
食欲を増進するグレリンが増えたということは、
睡眠不足では肥満が誘導されやすいと考えられます。

みなさんも徹夜が続くと食欲が高進し、
体重オーバーになった経験はないでしょうか。
睡眠はただ脳や身体を休ませているだけでなく、
記憶を整理したり、
身体の修復をしている大事な時間です。
睡眠不足が長期的にわたると肥満になり、
生活習慣病の原因となってしまいます。

富山大学の十年にわたる子どもの睡眠時間と肥満に関する調査では、
3歳の時に睡眠時間が9時間以下だった子どもは
11時間以上寝ていた子どもにくらべて
1.6倍肥満になる率が高まっていました。
最近問題になっている小児肥満の解決には睡眠からのアプローチも大切と思われます。

皆さん!睡眠の効用を理解して、
ぐっすり寝てスリムになってはいかがですか。

睡眠についてもっとお知りになりたい方は、
拙著の漫画でわかる「快眠家族のススメ」(恒星社厚生閣刊)
をお読みいただければ幸いです。

 

出典:宮崎総一郎 「快眠ライフのために⑥」 『京都新聞』 2008年5月6日


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