日本人の睡眠時間は、社会のスピード化と24時間化で、
高度成長をへて一貫して減少してきました。
1995年のNHKの国民生活時間調査報告によると、
日本人の睡眠時間は、欧米のどの国よりも短く、 特に女性は世界一短くなっています。
男性は労働時聞が先進国で最も長いことが理由です。
女性は朝早く起きて子供の弁当を作り、
夜は帰宅の遅い夫に合わせて就床時間が遅れるなど、
家族に合わせて生活していることが挙げられています。
学生の睡眠時間は小、中、大、高校生の順に短くなっていき、
90~95年にかけて急速に短縮、高校生ではついに7時間を割っています。
これは就床時間の遅れで起こっており、大人同様、子供の生活の夜型化を示しています。
学校における問題行動の増加や朝食抜きなど、 生活の不規則化との関連性も指摘されています。
最新の同報告(2005年)では、日本人の睡眠時間は平日7時間22分、
土曜日7時間47分、日曜日8時間14分となっています。
就寝時間は、70歳以上は午後10時、30、40代は11時台後半、
20代は午前0時と、年代差が大きくなっています。
平日の就寝状況は五年前と比べて変化はありませんが、 朝の起床は早起き傾向になっています。
今回の調査で最も重要な変化は、
1970年以降一貫して減少傾向にあった睡眠時間が 平日と日曜で初めて止まったことです。
土曜は逆に増加しました。
職場の週休二日制の定着や完全学校週五日制、高齢化の影響とされています。
睡眠時間については好ましい変化です。
しかし生活時間は、労働時間が長くなり、仕事の時間帯も分散化しています。
自由時間の伸びも止まっており、憂慮すべき傾向も見られます。
夜型社会や30~40代の睡眠不足、無呼吸など、 睡眠の質を悪くする疾患の増加は続いており、
解決すべき課題はまだ山積しています。睡眠問題は社会問題と密接に関係しており、
よい睡眠を取るには安心した住みよい社会が不可欠です。
日本社会が新たな転換期を迎えている中、睡眠の実態や社会的意義を知り、
日常生活に活用することが望まれます。
出典:名嘉村 博 「良い眠り 良い人生 13」 『琉球新報』 2008年7月22日