昼間に眠気や居眠り

昼間に著しい眠気や居眠りがある疾患を過眠症と呼びます。
眠気の強さは通常質問票で本人の主観的な訴えで調べます。
客観的測定では睡眠ポリグラフィー(PSG)を用いて、
日中に3時間間隔で4~5回、眠るまでの時間(睡眠潜時)を測定します。
これは反復睡眠潜時検査(MSLT)と呼ばれ、8分以下では病的眠気です。

不眠症の人は不眠を過大評価し、過眠症では眠気を過小評価する傾向があります。
過眠症の診断ではまず、単なる睡眠不足ではないか就寝時間や睡眠時間を聞きます。
パソコンやゲームで夜遅くまで起きて、
寝不足で日中過眠となっている例もまれではありません。

精神科や頭部外傷、脳腫瘍などの脳神経疾患や内科疾患、
あるいは薬剤の服用でも日中過眠は出現します。
睡眠時無呼吸症候群や睡眠関連運動異常症も
日中過眠の原因として非常に多い疾患です。

ナルコレプシーは
一九世紀末にフランスの医師が初めて記載した過眠症の代表疾患です。
「ナルコ」は麻酔あるいは睡眠、「レプシー」は発作の意味です。
症状の特徴は
①耐えられない眠気で時と場所を選ばす寝てしまう(睡眠発作)
②笑ったり、びっくりしたり、時には怒ったりしたときに数秒から数分間、
筋肉の弛緩が起こり頭ががくんと垂れたり、転んだりする(情動脱力発作)
③睡眠直後に夢か現実か分からないような生々しい夢を見る(入眠時幻覚)
④金縛り(睡眠麻痺)
の四つです。

これらの症状は正常な場合、
寝入ってから一時間ほどで始まる(筋肉が弛媛する)レム睡眠が
睡眠直後や日中に頻繁に突然出現するためです。
1999年に覚醒を高めるホルモン(オレキシン)が発見され、
ナルコレプシーではオレキシンが低いことが明らかになっています。

発症は十代に多く、欧米では1万人に2~4人程度とされていますが、
日本人はそれよりも多いようです。
そのほかの過眠症として、 頻度は少ないですが 原因の分からない特発性過眠症、
食事やトイレ以外は数日から、 長い例では一カ月近く寝続ける 反復性過眠症などがあります。

n.r22

 

過眠症は怠けものと誤解されることが多々あります。

しかし治療をすれば一般の健常者とほぼ変わらない生活が送れます。
過眠症の社会的認知度を高めて不当な差別をなくす努力も必要です。

 

出典:名嘉村 博 「良い眠り 良い人生 22」 『琉球新報』 2008年10月6日


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