先週は夜に強い光を浴びると体内時計が遅れて、
寝付きが悪くなることを説明しました。
では寝付きを良くするにはどうすればよろしいでしょうか。
保険会社に勤務している井上さん(50)からのメールです。
「先生から夜の光の影響についてお聞きした日より、
就寝前に部屋の明かりを変えてみました。
夜はリビングでくつろぐことが多く、
テーブルの上約105センチメートルの所に、
つり下げ式の蛍光灯(リング型・大小ニ灯)があります。
今まではその下でかなり長い間座ったままでいました。
先生のお話を思い出し、
前からつけてあった間接照明を使ってみました。
もともと、十二時前に就寝するりズムができていますが、
『不幸』があってやや寝つきが悪かったのですが、
徐々に興奮状態から脱する自分に気付き、
落ち着いた気分で眠りにつくことができました。
朝の目覚めも良くなり、
ほんのわずかな工夫で気持ちが整うことを実感しました」
最近の睡眠と光の研究から、
睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌を抑制しやすい光の波長があることがわかってきました。
具体的には、青色の波長がメラトニン分泌を低下させます。
この波長は白色の蛍光灯に多く含まれている成分です。
逆にメラトニン分泌に影響しないのはだいだい色の電球色です。
前回登場の鈴木さんは、
新幹線の中で青白い蛍光灯の光に
二時間以上もさらされたために寝つきが悪くなっていました。
だいだい色の電球色は気持ちが安らぐだけでなく、
メラトニン分泌に影響が少ないので寝つきが良くなります。
間接照明のバーにいると自然に眠くなるのはそのせいでしょうか。
国民生活時間調査(NHK放送文化研究所)では、
1960年には平均八時間以上あった日本人の睡眠時間が、
2005年には七時間二十二分、
夜十時までに寝ている人は
1960年には60%以上いたのに、
2005年にはたったの24%になってしまいました。
夜型社会になった原因のひとつに
この蛍光灯で明るく照らされた環境が影響しているのかもしれません。
皆さん、夜はこまめに消せる電球を使用して、
地球温暖化を防ぎ、自らの睡眠を良くしてはいかがでしょうか。
出典:宮崎総一郎 「快眠ライフのために④」 『京都新聞』 2008年4月22日