先日、大津から京都に向かうために、朝の9時にタクシーをお願いしました。
とても明るい感じの良い運転手さんでした。
現在68歳で15年のタクシー歴。
夜勤に引き続いて先ほど京都から、大津までお客さんを送ってきたところで、
とてもタイミングが良かったとのこと。
「お疲れではありませんか?」とお聞きしたところ、
「朝の2時から4時まで、ヒマな時間に2時間寝ていたので、すっきりしています。大丈夫ですよ」
そこで、健康維持と眠る秘訣についてお聞きしました。
「夜勤を専門としています。眠りかたの上手な人はやはり売り上げが良いですね!
勤務を終えて帰宅後、自炊で食事を済ませます。
私は酒が好きなので2合ほど飲んで寝ています。昼の眠りは浅いようです」
休日の過ごし方についてもお聞きしました。
「夜勤明けの休日はそのまま寝ないで過ごし、
夜の9時から12時間ほど眠るようにして、昼間の体に戻しています。
運動が好きで、週に2回は、京都女子大の東側にある豊国廟の階段500段を上っています。
また、妻と共通の趣味で、一緒に各地の山に登っています。
たとえば北アルプスに行くときは、朝4時に仕事を切り上げ、6時に家を出発します。
昼12時ころに到着、ホテルでゆっくりします。
翌朝に登山、降りてきて、温泉に入り、夕食を済ませてゆっくりしたのち帰宅します。」
睡眠学で見ると
この運転手さんのお話には、睡眠学からみて良い点と悪い点があります。
良いところは、夜勤中の朝2時から4時ころに仮眠をとっていることです。
この時間帯は、ヒトの体温が最も低下し眠気が強くなる時間帯なのです。
交通事故もこの時間帯に頻発していることが報告されています。
眠りかたの上手い運転手さんは売り上げが良いだけでなく、安全ドライバーなのです。
次の良い点は、夜勤明けの休日に、昼間は寝ないでがんばって、 夜9時からたっぷり眠っていることです。
また、登山の際にも寝ないで現地に向かい、当地でゆっくりしています。
これらの方法は身体を通常のリズムに戻すためや時差ボケ解消にもとても有効です。
起床後、十分な運動をすることも体内時計のリセットにさらに効果があります。
眠りの質を良く
悪いところは、寝酒を飲んでいることです。
徹夜明けだけでなく、 寝る前に寝酒としてアルコールを常用している方が少なからずおられると思います。
アルコールを摂取すると、確かに寝つきはよくなりますが、
途中で何度も目が覚めるという経験はないでしょうか。
実はお酒には中途覚醒作用があり、眠りを浅くして眠りの質を下げてしまいます。
その上、利尿作用で睡眠中に何度も目を覚ましてトイレに行くことになり、 眠りがさらに悪くなります。
また、アルコールの作用で心拍数も20%ほどアップするので、
心臓や身体も十分に休むことができなくなるのです。
寝酒を飲むくらいなら、睡眠薬を適切に使うことをお勧めします。
短時間だけ作用するものを処方してもらって下さい。
眠れるようになったら量を徐々に減らし、やめればよいのです。
ただし、睡眠薬とアルコールを一緒に飲むのだけはお控えください。
一緒に飲むと、その前後の記憶が途切れることがあります。
深夜勤務や睡眠時刻の不規則な方の眠りかたについては、
拙著「どうしてもがんばらなくてはならない人の徹夜完全マニュアル」(中経出版) をご参考にしてください。
眠りは読者の皆様の健康と生活に深く関係しています。
これからご一緒に眠りについて考えていきましょう。
「出典:宮崎総一郎 『全国商工新聞 』2012年6月4日」