赤ちゃんが眠っているときに、
まぶたの下で眼球がキョロキョロと動いたり、
まぶたをパチパチして、にっこりと天使の様に笑うこと(新生児微笑)がありますね。
さらに手を伸ばしたり、ものを握ろうとする様子も見られます。
赤ちゃんは、出生後すぐに泣いて母親を呼んだり、お乳を飲んだりすることが必要です。
この様な動作ができるように、
神経回路を生まれる前につくるのがレム睡眠の役割と考えられています。
睡眠には2種類の睡眠があります。
一つは夢と関係の深いレム睡眠、もう一つは、脳がゆっくりと休むノンレム睡眠です。
大脳ができて、まず現れるのが「レム睡眠」です。
この睡眠は胎児や乳幼児では「動睡眠」と呼ばれます。
なぜなら、この眠りの状態では中枢神経系や筋肉系を始動させる信号が出され、
胎児が盛んに動くからです。
レム睡眠は、大脳の機能を発達させ、
大きく成熟させる役割をレム睡眠が担っています。
生まれたばかりの赤ちゃんは未熟です。
とりわけ大脳は成熟するまで、十数年を要します。
脳内の神経回路づくりは乳幼児期にも継続されます。
赤ちゃんが良く眠ること、レム睡眠が多いこと、
レム睡眠の割合が発育とともに劇的に減っていくのはこのような理由によります。
図形の認知でも
静岡のある幼稚園で、3歳から5歳までの園児に、
図のように、 /、×、△を描いてもらいました。
3才児では、/は描けるものの、×や△はその大半で描けませんでした。
5歳児になると全員が、正しく模写出来ていました。
△を描けるのは平均的な5歳児の知能発達段階と考えられています。
和洋女子大学の鈴木みゆき先生が、
東京の保育園児226名を対象にした睡眠の規則性と脳機能の発達についての調査結果は
興味深いものです。
規則正しく早寝・早起きをしている5歳児188名と、
遅寝、遅起き、長時間の昼寝をしている子34名に三角形を描かせた研究では、
睡眠リズムの乱れている子どもの44%が三角形を正しく認知できず描けなかったのです。
早寝・早起きのリズムが脳機能の発達に重要であることがうかがわれます。
睡眠時間削られ
山口県教育委員会の調査(2006年)では、
学力偏差値と知能指数ともに、就寝時刻が夜9時までの子供がもっとも良好で、
10時、11時と遅くなるにつれて点数が明らかに低下していました。
知人の陰山英夫先生(立命館大学)は、
100マス計算の実践で子供の学力を飛躍的に改善したことで有名ですが、
次のように話されています。
「私は尾道市の小学校校長をしている。ここには地域の教育力がある。
例えば朝ごはんをきちんと食べさせてほしいと言えば、保護者もきちんと実践してくださる。
子どもたちは朝から元気で活発に遊び、体力もつく。
小学校6年生になっても、夜の9時半に寝ている子が半数以上いて、
朝も6時前に起きている子が2割近くいる。
早寝早起きの習慣がついているのだ。
寝れば頭がすっきりし、
集中して学習にも取り組むことができるし一日を有意義に過ごせ、心理的にも余裕が生まれる。
その状況を悪くさせたのがテレビ、インターネット、携帯電話の普及だ。
一日2時間以上をインターネットや携帯電話などに費やし、
多くの情報にさらされ、睡眠時間を削られている。
子どもたちの精神に与える影響は計り知れない。」
睡眠は、ヒトの心身の中枢である、
「脳を創る」、「脳を育てる」、「脳を守る」、「脳を修復する」という大切な役割を演じています。
適切な睡眠は、子どもの健全な心身形成にとってとても大切です。
参考資料:WILLWAY教育情報誌第4号,2005
「出典:宮崎総一郎 『全国商工新聞 』2012年7月9日」