洞爺湖で「地球環境」をテーマにしたG8サミットが開催されました。
地球温暖化対策のめだまとして政府は、
サマータイム(夏時間)導入を前向きに検討しています。
主要八カ国の中でサマータイムを導入していないのは日本だけなのです。
夏時間は3月から10月までですが、
皆さんは明日から夏時間が始まるからといって
前夜に一時間早く寝付くことが、
直ぐにできるでしょうか。
また、毎朝一時間早く起きなければならないとしたらどうでしょう。
写真は、6月に開催された日本睡眠学会ワークショップに
ドイツ・ミュンヘンから参加してくれた、
ティル・レンネベルグ博士ですが、
「サマータイム制度には多くの問題があり、
期待される効果よりも弊害が多い」と
話してくれました。
夏時間では、
私たちの身体の時間(体内時計)と社会の時間が同調できず、
睡眠不足や時差ぼけの状態となってしまいます。
レンネベルグ博士はドイツ国民5万5千人を対象に調査し、
体内時計がサマータイムに適応するのに三週間以上要しただけでなく、
季節のリズムを乱すこと、
春の移行時には睡眠時聞が短縮し
夜型人間ではとくに睡眠障害が強くなると
最新の研究結果を紹介してくれました。
人の睡眠リズムは春秋二回の時間変更にすぐに同調できず、
その間計算能率が低下すること、
春の変更時には目覚めの気分が悪くなるなどの影響がでます。
話は変わりますが、アメリカの高校では
始業時間を朝7時半から8時半に遅らせたことで、
出席率が良くなり、
学業成績が向上したとのことです。
思春期の学生はただでさえ夜更かしなので、
朝に一時間長く眠ることで唾眠不足が解消され、
頭の働きが良くなったと推測されます。
今のような夜更かしの日本で
時計を一時間早くする夏時間を導入すると
どうなるか皆さんお分かりですね。
2005年にはそれまでサマータイムを導入していたカザフスタン共和国で、
期待された省エネ効果が無いこと、
健康に悪影響を与えることを理由に廃止法案が可決されています。
ロシアでも「心筋梗塞や自殺が増加」として廃止法案が提出されています。
私たちの体内時計は本来、
太陽とともに目覚め、
日没とともに眠るといった自然環境に適応するよう出来ています。
人為的に時間をいじることは、
省エネにならないだけでなく、
健康に良くないことがあります。
出典:宮崎総一郎 「快眠ライフのために⑯」 『京都新聞』 2008年7月15日