日本には昔から理屈に合わない「美徳」が根付いています。
昼寝は「怠け者」の象徴として語られてきました。
しかし、最近では睡眠の重要性について医学的に解明され、
昼寝の効用が見直されています。
74歳の佐々木さん(仮名)は最近よく眠れません。
連休も終わり、
孫も遊びに来てくれません。
日中はぼんやりと過ごし、
夕食後にテレビを見ながらうたたねしてしまいます。
そのあげく、夜は眠れなくなって困っています。
広島国際大の田中秀樹先生は、
不眠で悩む高齢者を対象に、
昼食後の短時間昼寝と
夕方の軽運動(軽いストレッチや腹式呼吸で習慣づきやすいもの)
の指導を四週間、週三回行いました。
すると、
昼間の覚醒の質が向上、
夕方から就床前にかけての居眠りが減り、
夜間の睡眠が改善することがわかりました。
また、日中の眠気が改善し、
活動のメリハリもでてくること、
精神健康も改善することがわかりました。
さらに、注意力、柔軟性やバランス感覚、脚筋力が改善しました。
睡眠が改善したポイントは、
日中の適正な覚醒維持、
夕方からの居眠り防止です。
つまり短い昼寝と夕方の軽い運動が夜の質の良い睡眠を促し、
また翌日起きている時も生活の質が高まるという
良い循環が形成されたといえます。
ヒトの眠気を調べると、
食事に関係なく午後2時~4時と午前2時~4時に眠気のピークがあリ、
12時間リズムで眠くなることが判っています。
この眠い時間帯に20分程度眠るとその後の覚醒度、
作業能率はとても向上し、
さらには夜の睡眠まで改善することが研究で証明されています。
ただし、長い昼寝はぼんやりの原因となり、
夜の睡眠を悪くしますので、
午後3時までに、短時間で切り上げてください。
また「30分以内の昼寝は認知症発生の危険性を低くするが、
一時間以上だと逆に危険性を高める」との研究もあります。
滋賀医大第一サテライト睡眠外来では、
眠りの改善を目的として、
運動プログラムを実施しています。
健康運動指導士の河野さんが指導に当たります。
人数が集まれば実施しますので、
ご希望の方は睡眠学講座まで、お問い合わせください。
安全で活力ある一日を過ごすため
短い昼寝を活用してはいかがですか。
出典:宮崎総一郎 「快眠ライフのために⑰」 『京都新聞』 2008年7月22日