何時間眠れば良いの?

先般、市民講座でお話しするために訪れた愛知県知立市は、弘法大師に関係したお寺が有名です。
お年寄りがとても元気な町でした。
門前のお菓子屋さんで名物「大まき」をご馳走になりました。
そこで、「何時間眠るのが良いのでしょうか?」と質問がありました。
答えは、「睡眠時間は人それぞれ。
朝起きて疲労感がなく、昼間に普通に活動できていれば、
あなたの睡眠は足りているとお考えください。」

 

短眠か長眠か

 

長く眠らないと調子がでない人、短くてもすっきりしている人、人それぞれバラエティがあります。
あなたはどちらでしょう。
①寝つきはたいへん良い、②目覚めはいつも爽快だ、③毎夜6時間未満しか寝床にいない
この3項目に該当するならあなたは「短眠者」です。

一方、④毎夜9時間以上は寝床の中で過ごす。
④に該当するなら、あなたは「長眠者」です。

毎夜6~9時間寝ているなら普通の人です。
短眠者、長眠者はそれぞれ人口の5~10%を占めています。
一方、2004年に報告された日本人の睡眠時間と死亡の危険率を調べた調査では、
6.5~7.5時間の人がもっとも危険率が低く、
4時間以下や9時間以上寝ている人では危険率が1.3~1.6倍高くなっていました。

漫画家・水木しげるさんは、90歳ですが、次のようにお話しされています。
「人生哲学は『睡眠至上主義』。
睡眠を削って頑張るのを良しとする風潮が日本中を覆っている。
実に嘆かわしい。
寝る時間を犠牲にして粉骨砕身、
努力してきた手塚治や石の森章太郎は早々とあの世に行ってしまった。
好きなだけ眠らずして何が幸福か!と仕事を減らしました」

対照的に、聖路加国際病院の日野原重明先生は、100歳になりますが、
診療・講演に加えてミュージカルの監修をしたりとエネルギッシュです。
「だいたい午前2時に寝て、朝の6時30分には起きています。
原稿を書くために徹夜することもあります。
午前中から予定もぎっしりだから睡眠は平均5時間弱だね」
「忙しいから、食事の時間も大幅短縮。
朝はコーヒー、昼は牛乳とクッキー2枚だけ。夕食以外、食事に時間をかけていない」

かのアインシュタインは10時間以上眠らないと調子が出ない長時間睡眠者の代表ですが、
相対性理論もベッドの中で思いついたとのことです。
逆にナポレオンやイギリスのサッチャー元首相は短時間睡眠の代表です。
一概には言えませんが、長時間眠る人は創造的、芸術的な仕事をする人に多く、
短時間睡眠者は政治家に多いそうです。

 

朝型か夜型か

 

寝起きで分けると「朝型」と「夜型」に分かれます。
早寝早起きである、午前中のほうが頭が冴えているなら、あなたは朝型です。
宵っ張りの朝寝坊で、午後から調子がでるタイプなら、あなたは夜型です。
人によって体内時計には進んでいる人もいれば、遅れている人もいます。
朝型と夜型の人では体温リズムも異なります。
図のように、体温のピークが早めに来る人は朝型、遅めに来る人は夜型です。

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どちらの型であっても昼夜リズムが社会の時計と同調し、
生活が規則的に繰り返されている限り問題ありません。
少なくとも、睡眠に関する限り「早起きは三文の徳」が良いわけでもなければ、
「宵っ張りの朝寝坊」が悪いわけでもありません。

睡眠時間やリズムは人それぞれです。
自分の睡眠特性を知って、うまく社会に適応し、楽しく生活することが大切です。

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「出典:宮崎総一郎 『全国商工新聞 』2012年6月18日」


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