体内時計 光の影響強

動物はなぜ眠くなるのでしょうか。理由は二つあります。

一つは生物時計といわれる体内時計があり、寝る時却を知らせるためです。
人聞を含む哺乳類の体内時計は、脳内の左右の視神経が交差する真上の視交叉上核にあります。
直径一~二㍉です。
人聞を時計も光もない洞窟などに閉じ込めて生活させた実験では、
およそ二十五時間周期で生活するようになりました。
この観察から、人間の本来の体内時計は二十五時間周期とされています。

しかし、実際にはほぼ一日の単位である二十四時間で睡眠と覚醒を繰り返すので、
この周期を、およそ(=サーカ) 日(=ディアン)という意味で、
概日(サーカディアン)リズムと呼びます。
概日リズムは、光による明暗、出動や登校時間などの社会生活、
食事、運動、睡眠環境などで調整されます。

中でも、光の影響は最も強力で、時計を進める方向に作用します。
毎朝、光に当たると、夜寝る時間が早まります。
夜間に強い光に当たると、寝つきが悪くなります。
体内時計は、明け方と午後二時前後に眠気が強くなるリズムも生み出します。
体内時計による概日リズムは、睡眠だけでなく、体温やホルモン分泌の調整もします。
体温は、明け方の五時ごろ最低になります。
ストレスを調整するホルモン・コーチゾルは朝五時から六時ごろに分泌が高まり、
夜にかけて減少します。逆に、睡眠を促進するメラトニンは、夜の七時ごろから高まり、
十一時ごろにピークを迎え、夜中にかけて減少します。

体温やこれらのホルモンは、睡眠と同調しているように見えますが、
寝なくても、決められた時間になると、決められたパターンで変化します。
これを概日リズム依存性といいます。

ホルモンの中でも、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、乳汁を分泌させるプロラクチンなどは、 睡眠時のみに分泌され、夜間でも起きていると分泌されません。
これを睡眠依存性といいます。

眠気が生ずるもう一つの理由は、恒常性(ホメオスターシス)の維持と呼ばれる機能です。
睡眠中枢や睡眠物質の働きで現れ、足りていれば補わず、不足していれば補うという単純な原理です。
眠らない時間が長いほど眠気は強くなり、寝ると寝入りばなにノンレムの深い睡眠が多量に現れます。
寝不足であればあるほど、質のよい深い睡眠がまとめて起こるので、徹夜しても、
不足した分の睡眠時間ではなく、少し多めに眠ればよいわけです。

出典:名嘉村 博 「良い眠り 良い人生 8」 『琉球新報』 2008年6月17日


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