多くの鳥類は木の枝にとまったまま寝ます。
時乳類のように連続して寝ず、二分程度の睡眠を断続的に反復してとります。
筋力が低下するレム睡眠が十秒以下と短いため、寝ても木から落ちないのです。
ツルやフラミンゴなどは、干潟で一本足で立って寝ることもあります。
鳥類は体温が高く、両足を外気にさらすよりも保温の効率が良いのです。
干潟なら天敵の発見が容易で、一羽が襲われても群れで一斉に逃げることができます。
ハトの一種はまばたきしながら寝ます。
周囲に天敵がいると、まばたきは増え、仲間の群れがいると逆に減ります。
このように、安全性や安心感が睡眠様式に影響します。
カモメなどの渡り鳥は、海上を一週間以上も休むことなく飛び続げます。
数秒から数分間の断続的な睡眠をとりつつ、
反射的な運動で翼を動かして飛んでいるのです。
哺乳類のクジラやイルカの中にも、休まず泳ぐものがいます。
イルカの脳波を調べると、左右の大脳が、
かわるがわる限りながら泳ぎ続けていることが分かりました。
半球睡眠でレム睡眠を短くすることで、連続して泳いだり、
飛んだりすることを可能にしています。
日中四十度の体温を持つハチドリは、寝るときに、
変温動物の冬眠のように体温を二十度前後まで下げます。
冬眠が季節単位なのに対し、これは一日単位で起こることから「日内休眠」と呼ばれます。
ハチドリは日内休眠で一時的な冬眠状態となり、日中のエネルギー消耗を防ぎます。
冬眠は変温動物の睡眠ですが、恒温動物も冬眠します。
ヤマネやハムスターなど哺乳類の場合も、体温が環境温度まで下がり、代謝が低下します。
脳波も検出されなくなります。見かけは変温動物の冬眠と同じですが、
間隔を置いて数時間から数日にわたり、体温が活動レベルまで回復します。
脳波には、深いノンレム睡眠が出現する周期が、繰り返し見られます。
こうした現象がないと、冬眠中に死んでしまうようです。
このことから、哺乳類の冬眠は、睡眠と言うより断眠の一種で、
ときどきノンレム睡眠を入れて睡眠不足を補っているとの見方が有力です。
クマの冬ごもりも、体温はあまり下がらず、睡眠はうとうとに近い状態です。
メスのクマは出産や育児もするので、厳密な意味での冬眠とは言えないようです。
出典:名嘉村 博 「良い眠り 良い人生 7」 『琉球新報』 2008年6月10日