カフェイン 入眠遅らせ脳を刺激

秋田市内の学校に勤務していた斎藤一先生(仮名)の体験談である。
斎藤先生は毎朝、学校に着くとコーヒーを飲むのが常であった。
頭がすっきりするようで欠かせなかったという。
午後に眠くなると、またコーヒーを飲んでいた。
ある時、たまたま長い旅行に出掛け、 ずっとコーヒーを口にしなかった。
すると寝付きが良くなり、 朝の目覚めがさわやかになった。
朝のコーヒーも欲しくなくなり、 それ以来飲んでいない。

コーヒーは、エチオピアのヤギ飼いが偶然発見したといわれる。
ヤギがコーヒーの実を食べると踊りだすことから、
その覚せい作用が発見されたのである。
覚せい作用は珍重され、 アラビアに最初のコーヒーショップができてから
数年でヨーロッパ全域にコーヒーが広がった。

コーヒーに含まれるカフェインは、
疲れてくると脳内にたまる睡眠物質が作用して
眠気を引き起こす部位に競合的に働き掛け、覚せいさせる。
また、脳の代謝を高めて脳活動を刺激するので頭がすっきりしたように感じる。
依存性があり、用量が多いほど覚せい効果は強くなる。
カフェインはさまざまな飲み物に合まれている。
その量は本格的なコーヒー一杯で130~150mg、
インスタントコーヒー一杯で65mg、
紅茶一杯で40~60mg程度。
ほかにはコーラ一缶に30~50mg、
健康ドリンク一本にも五十ミリ程度が入っている。

カフェインは入眠を遅らせ、睡眠時間を減らし、中途覚せいを増やす。
やや多め(400mg)に取ると睡眠中の脳の代謝率が高まり、
浅い眠りが増え、深い睡眠が減って睡眠障害となってしまう。
カフェインの効果は四時間以上持続する。

あまり豆をいっていないアメリカンコーヒーは薄いように感じるが、
よく焙煎した香りの良いコーヒーに比べてカフェイン量が多い。
アメリカ人はすっきり目覚めて働こうと
アメリカンコーヒーを好むのではないかと推測される。

現在、カフェインはアメリカ東海岸の海水からも検出されるほど多量に摂取されている。
カフェインはうまく使用すれば快適ライフに役立つかもしれないが、
知らないうちに取り過ぎて睡眠を悪くしているかもしれないのでご注意を。

 

出典:宮崎総一郎 「眠りの不思議8」 『秋田魁新報』 2009年3月23日


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