いびきの変化がサイン

四十六歳の山城さん(仮名)は、
半年前から体重が百㌔から百十㌔に増え、
血圧も130だったものが180と高くなってしまいました。

いびきは前からひどいと言われていたのですが、
最近ではそのいびきがピタッと急に静かになり、
その後数十秒してガーと息をするようになっていると奥さんから言われました。
また、寝ているときにトイレにたびたび行くようになりました。
知らないうちにおもらしをしていたこともあり、
とてもショックでした。

泌尿器科を受診して前立腺の検査を受けましたが、
特に問題ないとのこと。
また、高速道路を運転している際に眠くなって、
幸い事故にはなりませんでしたがヒヤッとすることが何回もありました。
奥さんから、
今話題の睡眠時無呼吸症候群かも知れないからと
睡眠クリニックの受診を強く勧められたのです。

早速、京都市下京区にある睡眠専門のクリニックをたずね、
鼻やのどの診察とレントゲン写真、
一泊して睡眠中の呼吸と脳波を記録する検査を受けました。
その結果、寝ているときに三百回以上も呼吸が止まり(通常は三十五回以下)、
体の中の酸素讃度が60%まで低下(遇常は95%)していることがわかりました。

先生の説明では、
睡眠時無呼吸症候群では、肥満(35%)、
下顎の小さいこと(35%)、
扁桃肥大(20%)、
鼻づまり(10%)等に加えて、アルコール、
上向きで寝ることなどが、
単独または複合して睡眠時無呼吸を引き起こすが、
山城さんは、扁桃肥大はなく、
顎も小さくはないので、
「体重増加が原因です」と説明されました。

先生からは減量が大切だが、
すぐできる治療として鼻から空気を送って
その庄カで狭くなった気道をひろげて呼吸するシーパップ治療を処方されました。
シーパップを始めたその日の夜からトイレにまったく行かなくなりました。
ぐっすり眠れるようになり朝の頭の重さもありません。
血圧も低下し、
昼間の眠気も解消して元気になりました。

睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、
無呼吸のためにおく眠れず、
そのため様々な症状を訴えて、
色々な診療科を受診します。
山城さんのように頻尿やインポテンツで泌尿器科にいく場合もあります。
高血圧で循環器科を受診したり、
意欲低下やうつ傾向で心療内科や精神科を受診したりすることもあります。

周囲の人が迷惑なほどのいびきは、
自分自身にも負担となっているのです。
また生活習慣病とも深く関係しています。
検査などはまったく痛くありません。
早めにかかりつけの先生または睡眠クリニックにご相談ください。

 

出典:宮崎総一郎 「快眠ライフのために⑱」 『京都新聞』 2008年7月29日


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