読者の方から、
「アルコールは睡眠に悪いと書かれていましたが、やっぱりアルコールを飲んでは駄目でしょうか」
「寝酒が駄目なら、何時間前に飲んだら良いのでしょうか」と質問が寄せられました。
中途覚醒を招く
眠れないときに、寝酒をたしなんでいる人が多いと思います。
眠れないときの対処として、日本と南アフリカではお酒を飲むことが多く、
欧米や中国では、眠れないときには睡眠薬を飲んでいるという調査結果があります。
わが国では、その昔、芥川龍之介や太宰治が自殺目的で睡眠薬を用いたことから、
睡眠薬は怖いもの、依存性があるのではないかと多くの人が思っています。
睡眠薬より、アルコールの方が安全と思って飲まれているのです。
アルコールには、確かに中枢神経抑制作用があり、
鎮静・催眠効果をもたらします。
このような作用を利用して、睡眠薬代わりに寝酒をたしなんでいるのです。
しかし、アルコールは睡眠前半には寝付きを良くしますが、その反面、
睡眠後半には中途覚醒が起こり睡眠の質を悪化させます。
私たちはなぜお酒を飲むのでしょうか。
そうです、アルコールにより緊張が取れ、
抑制が緩和されるので日ごろは言いにくいことをはっきり言えるなど、
コミュニケーションが良くなるため、ノミニケーションともいわれていますね。
実は、アルコール濃度が薄いときには、脳は興奮します。
その後アルコール量が多くなるにつれて、
血液中のアルコール濃度も高くなり、
中枢神経系を抑制するために、眠気をもよおしやがて寝入ってしまいます。
その後アルコールが徐々に代謝されて、3時間ほどすると、
血液中のアルコール濃度がまた薄くなって、
再度興奮期が来るために、眠りは浅くなっていきます。
酒を飲んでもすっきりおきられるという人は、
実はこのアルコール濃度が薄くなったときに興奮して、目が覚めているのです。
興奮しているので、目が覚めた後、もう少し眠ろうと思っても眠ることはできません。
また、アルコールには利尿作用があるので夜間に何度もトイレに行くことになり、
結局は睡眠の妨げになります。
また、アルコールを多量に飲むと、筋肉も緩み、気道が狭くなって、
いびきや無呼吸の原因になります。
68歳の歳の女性が寝付きが悪いのでで、
睡眠薬をこの1年ほど、半錠から1錠を飲んでいました。
あるとき、やはり睡眠薬をいつまでも飲むのは良くないだろうと、
代わりにウイスキーを少し飲んだそうです。
すると寝付きは良いのですが、飲んだ晩は何度か目を覚ましたそうです。
また氷を入れたせいかトイレも近くなってぐっすり眠れなくなったので、
結局はまた睡眠薬を服用するようになったそうです。
寝付きは良いが
適量のアルコールは、寝付きを良くし、深い睡眠を増加させます。
しかし、代謝と排せつが早いため、アルコールの血中濃度が低下する睡眠後半には、
眠りが浅くなり中途覚醒が増えます。
さらに、悪い夢を見ることが多くなり、
交感神経活動が高ぶって脈が速くなり、汗をかいたりします。
アルコールは、寝付きを良くしますが、睡眠の後半では眠りを悪くします。
どうしてもアルコールを飲みたい方には、
次のように話しています。
「安い酒を飲まないで、何万円もする高級なお酒を、
味わいながらゆっくりと少し飲むのはいかがでしょうか。
リッチな気分でリラックスできるし、
量も多くならないのでアルコールの悪影響も少ないかもしれません」
「出典:宮崎総一郎 『全国商工新聞 』2013年2月4日」