眠りと嗜好品

眠れないときには寝酒を、
逆に眠いときにはコーヒーを飲んで目覚ましとしている方が多いと思います。
お酒やコーヒーが眠りにどのように影響しているのでしょうか。

アルコールには、中枢神経抑制作用があり、
鎮静・催眠作用をもたらします。
このような作用を利用して、睡眠薬代わりに寝酒をたしなんでいる人が多いのです。
しかし、アルコールは睡眠前半には寝つきを良くしますが、
その反面覚醒作用もあり、睡眠後半には睡眠を悪化させます。

斉藤さん(60歳、自営業、仮名)は、寝酒を常としていました。
たまに寝酒をしないと寝つきが悪いので、毎晩飲んでいました。

いびきがひどいとのことで、あるとき病院の睡眠外来を訪ねました。
そこで先生から、酒はいびきを悪くするので、飲まないようにと指導されました。
飲まないとなかなか眠れません。
何としてねむろうかとストレスでしたが、
それでも頑張って飲まないで眠ると、翌朝頭がすっきりしているのに気付きました。

寝つきが少々悪くても、酒を飲まない方が、睡眠の質が良かったのです。

 

睡眠薬の服用で

 

適量のアルコールは一般に入眠を早め、深い睡眠を増加させます。

しかし、代謝と排泄が早いため、
アルコールの血中濃度が低下する睡眠後半には、眠りが浅くなり中途覚醒が増えます。
さらに、悪い夢を見ることが多くなり、
交感神経活動が亢進し脈が速くなり、汗をかいたりします。

このようにアルコールは睡眠前半には寝つきを良くしますが、
睡眠後半では睡眠を悪くするのです。
快眠しようとして飲んだ寝酒が、現実には睡眠を妨害してしまいます。

アルコールは睡眠薬代わりにはならないことを覚えておいてください。
斉藤さんも「酒が眠りを悪くすることをもっと早くわかっていればよかったのに・・・」と話されていました。

寝つきがどうしても悪いときには、お酒ではなく、睡眠薬を試すことも良いと考えます。
昔の睡眠薬は、呼吸を弱くする、
依存性があるといった副作用があり問題が少なからずありましたが、
今の睡眠薬はその点が改善されて安全に服用できるものになっています。

 

用量が多いほど

 

つぎに、コーヒーやタバコは寝つきを遅らせ、
睡眠時間を減らし、中途覚醒も増やして睡眠を悪くします。

友人の伊藤さん(64歳、建設業)は毎朝、職場に着くとコーヒーを飲むのが常でした。
頭がすっきりするようで欠かせませんでした。
午後に眠くなると、またコーヒーを飲んでいました。
ある時、たまたま長い出張に出掛け、ずっとコーヒーを口にしませんでした。
すると寝つきが良くなり、朝の目覚めがさわやかになったのです。
それ以来、朝のコーヒーが欲しくなくなり、全く飲まないでいるとのことです。
コーヒーに含まれるカフェインは、
疲れてくると脳内にたまる睡眠物質(アデノシン)が作用して、
眠気を引き起こすレセプターをブロックすることで覚醒させます。
また、カフェインは脳の代謝を高めるので頭がすっきりしたようにも感じます。
依存性があり、用量が多いほど覚醒効果は強くなります。

カフェインはさまざまな飲み物に含まれています。
その量は本格的なコーヒー一杯で130~150ミリグラム、
インスタントコーヒー一杯で65ミリグラム、紅茶一杯で40~60ミリグラム程度。
ほかにはコーラ一缶に30~50ミリグラム、健康ドリンク一本にも50ミリグラム程度が入っています。

コーヒーやお酒は適量であれば有用ですが、飲みすぎでは眠りを悪くしますので、注意が必要です

 

「出典:宮崎総一郎 『全国商工新聞 』2012年10月29日」


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