快眠を得るには③

 

1泊2日の入院

 

眠りの精密検査として、
睡眠中の脳波や顎の筋電図、目の動き、呼吸の状態、血液中の酸素濃度を、
一晩にわたって記録する「睡眠ポリグラフ検査」が行われます。

この検査は、一晩専門施設に泊まる必要があります。
1泊2日の入院検査となり、部屋代などを含め、
3~4万円程度(健康保険3割負担〉かかります。
検査を受ける方は寝ていればよいのですが、
検査技師は、徹夜で多数の生体情報を記録、
解析するため負担がとても大きくなり、睡眠検査をすればするほど、
眠れなくなります。

アメリカではこの検査は20万円30万円もかかりますが、
カリフォルニアでは、専門施設の睡眠センターと
すしバー1㌔ごとに交互にあるとジョークでいわれるほど数多くあります。
アメリカでは眠れずに睡眠検査を希望する人が増えているのでしょうか。

 

万歩計でも可能

 

睡眠ポリグラフ検査ほど正確ではありませんが、
簡単に万歩計に内蔵してある加速度計を利用して、
その動きから睡眠と覚醒を推定できる方法があります。
これには、体に浴びる光の量を測定するセンサーもついています。

図を見てください。

m.z32

黒く小刻みに動いているのが体の動きで、
起きていることを示しています。

大きく振れているところは活動量が大きく、
ほとんど動いてないところは、眠っています。
矢印のように、睡眠中に急に大きく振れているのは、
中途覚醒やトイレに行ったことを示します。
薄い灰色は、体に浴びた光の量を示しています。

実は、これは私の1週間の記録です。
11月21日と22日は通常に大学に出勤した日です。
21日は朝7時半ごろの通勤時間に15分ほど、
強い光を浴びていることが分かります。

その後はほとんど室内で座っているだけで、
大きな活動をしていません。
黒の活動量を見ると、夜10時近くまで振れ幅があるので、
起きていることが分かります。
その後、急に黒の振れが少なくなり、眠って静かになったことが分かります。
夜中の2時15分ごろ、矢印で示すように振れが大きくなっていますね。
これはトイレです。

22日も、ほとんど室内で過ごし、
夜は10時半まで起きていて、朝に中途覚醒しています。
23日は勤労感謝の日で、家族とテーマパークに行きました。
黒の活動量も多く、何より灰色で示す光をたっぷり浴びていることがよく分かります。
何時に寝たか、お分かりですか。
そうです、黒の活動量が夜8時前には急激に減っています。
その後、朝の5時まで寝ていました。

連休が終わって、デスクワーク中心の生活に戻ると、
日中の活動量が少なく、
光を浴びる量もわずかとなっています。
そうなると、寝付く時刻も遅くなり、
中途覚醒が出現しています。
光を浴びて適度に運動した日はぐっすり眠れ、
光をあまり浴びずに1日中、静かに室内で仕事をしていると、
ぐっすり眠れないことが分かります。
眠りに不安を感じたら検査を一度受けてみてはいかがでしょうか。

 

「出典:宮崎総一郎 『全国商工新聞 』2013年1月28日」


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