快眠を得るには②

今回のテーマは、睡眠リズムの評価です。
図を見てください。
これは睡眠日誌といって、睡眠時間や眠気のあった時間を毎日記録するもので、
睡眠の状況を知るのにとても良い方法です。
左が夜中の午前0時、右端が夜の12時で1日24時間を表わしています。
黒いバーは眠っている時間帯を示します。
眠気が強いときには、斜め線で記入します。
右端の欄には、夜間の覚醒回数とその日の特記事項などを記入します。

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54歳の女性は

 

この睡眠日誌を書いてくれたのは、54歳の女性です。
彼女は昼間に眠気がとても強く、
眠気の評価(ESS)は合計点が18点(10点未満が正常)でした。
とても強い昼間の眠気と、睡眠中のいびきや無呼吸がありました。
来院した際の記録(図の上)を見ると、
睡眠時間は短く、規則性がなくてばらばらに眠っているのが目につきます。
主婦なので、遅く寝ても朝には決まった時間に朝食の準備で起きなければなりません。
寝酒を飲まないこと、寝付きが悪いのなら睡眠薬を服用するようにアドバイスをしました。
アルコールは寝付きをよくしますが、睡眠の後半は睡眠を浅くし、
利尿効果でトイレに起きてしまい睡眠の質を悪くします。

また、休日でもウィークデーと同じ時刻に起きるように指導しました。
人間は、朝起きて日の光を浴びて約15時間前後で眠くなるようにできています。
例えば朝6時に起きると、眠くなる時刻は、6+15で21時、夜の9時ごろになります。
この眠りの法則は、朝日を浴びて約15時間前後で、
夜の眠りのホルモン、メラトニンの分泌が始まることと、
私たちの大脳は15時間連続運転すると、
酒気帯び運転と同じくらい機能が低下することの二つの要素から成立しています。

ですから、休みの日に9時まで寝ていると、
9+15で深夜の24時まで眠くならず、その日の寝付く時刻が遅くなり、
月曜日の朝は睡眠不足となります。

次に夜のメラトニンの分泌を高めるために、日中は戸外で光を30分以上は浴び、
それに軽い運動をするように指導しました。
日中に光を浴びた量が多いほどメラトニンが多く分泌されるとの研究があります。

また、昼寝を20分以内に控えるようにとアドバイスしました。
30分以上の昼寝は深く眠ってしまうため、目覚めが悪くなりますが、
20分以上の昼寝は、ノンレム睡眠の段階2で止まるため、
すっきりそう快感が得られ、その後の作業効率がアップします。

 

眠気も消えて

 

眼眠衛生の指導後は夜はほぼ11時に眠るようになりました(図下)。
寝酒を控えて、定期的に服用していた睡眠薬を飲まなくても眠れるようになりました。
夜間の中途覚醒は0からl回になり、昼間の眠気も少なく、
昼寝の回数が減っています。
また、いびきや無呼吸もまったくなくなり、
ESSも指導後は7点と正常になりました。
この女性の病気は、「睡眠不足症候群」というものです。
睡眠日誌を付けることで診断ができ、
本人もリズムの乱れを自覚して改善することができました。

 

「出典:宮崎総一郎 『全国商工新聞 』2013年1月21日  」


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