寝入りばなに大量分泌

睡眠中には、疲れた脳を休ませているだけでなく、
身体が創られたり、修復されています。
「寝る子は育つ」と昔からいわれています。
成長ホルモンにより子どもの筋肉と骨が増えて成長します。

四歳の男の子がお母さんと一緒に、
私の睡眠外来を受診しました。
お母さんの心配は最近、
体重がちっとも増えずかえってやせてきたことです。
昼間元気がなく、
寝ているときにはいびきがひどく、
無呼吸にもなっているとのことです。

調べてみると、偏桃肥大がいびきや無呼吸の原因であることがわかりました。
寝ているときに苦しい呼吸をしていると深い睡眠がとれず、
成長ホルモンの分泌が十分でなくなります。

男の子は、早速手術で肥大した扁桃をとりました。
四ヵ月後に、来られたときには、
身長が四㌢、体重も四㌔も増えたとのことで、
とっても元気になったとお母さんは喜んでおられました。

大人にとっても成長ホルモンは重要です。
成長ホルモンによって、
胃粘膜をはじめとして傷ついた細胞の修復がなされ、
新陳代謝が促進され、疲労回復できるのです。
成長ホルモンは大人でも
寝入りばなの熟睡しているときに集中して大量に分泌されます。

交代勤務でよく眠れない人たちに胃腸障害が多いと言われていますが、
これは睡眠不足によって消化管粘膜の修復がなされないからです。
また、夜勤明けの看護婦さんが、いつもの美人さんとはちがって、
目の下にくまができたり、肌に艶がなくなっているのは、
夜勤で眠れず成長ホルモンの分泌が十分でないために
皮膚の細胞が分裂して新生しないからです。

繰り返し説明しますが、
成長ホルモンは寝はじめの深い睡眠のときに分泌のピークがあります。
長く寝ていれば十分分泌されるものではありません。
睡眠がうまく取れないと分泌が低下して身体の成長、
修復ができないので、疲労回復がなされません。
「眠れる森の美女」という童話がありますが、
ピカピカのお肌のためにも夜更かしはしないで、
ぐっすりたっぷりと眠りましょう!

m.k9

出典:宮崎総一郎 「快眠ライフのために⑨」 『京都新聞』 2008年5月27日


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