全国商工新聞の読者の中にはリフォーム業の方もいらっしゃるでしょう。
今日はその方々への睡眠の観点からのアドバイスです。
お風呂で不眠?
私が奈良の栄養士さん対象の講演会で睡眠の話をしたときのことです。
睡眠には夜の光が良くないと説明しました。
講演後、50歳代の女性が、「先生の話を聞いて原因がよく分かりました。
実は数カ月前に、自宅のお風呂をリフォームしたのです。
それまでは、薄暗い風呂場だったのですが、
今は壁も浴槽も白くピカピカでとても明るく気持ち良いのです。
ただそのころからなぜか寝付きが悪くなってしまったのです。
寝付きの悪く原因は思い当たらなかったのですが、
きょうの光と、メラトニンの話を聞いて納得しました。
夜遅くに明るい光を浴びると、眠りの準備をするホルモンが出なくなって、
それで寝付きが悪くなったのですね。
今日から、風呂場の明かりを半分にしてみます」
と話していました。
目から入った光の情報は体内時計に直接伝えられます。
夜に強い光を浴びると体内時計が遅れ、
眠くなる時刻が遅くなることが知られています。
最近の研究では、それほど強い光でなくても、
夜に長時間にわたって浴びていると、
睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌が抑制制されることが分かってきました。
少し明るめの家庭の居間で300ルクス前後ですが、
この程度でも30分以上浴びているとメラトニン分泌が抑制されることがあります。
最近の睡眠と光の研究から、
睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌を抑制しやすい光の波長があることも分かってきました。
具体的には、青色の波長がメラトニン分泌を低下させます。
この波長は白色の蛍光灯に多く含まれている成分です。
逆にメラトニン分泌に影響しないのは赤みの強い電球色です。
電球色は気持ちが安らぐだけでなく、
メラトニン分泌に影響が少ないので寝付きが良くなります。
間接照明のバーにいると自然に眠くなるのはそのためです。
現在の私たちの周囲は明る過ぎます。
そのことで、体内時計が遅れて寝付きが悪くなっているのかもしれません。
特に、子どもたちには夜の光の影響は強く出ます。
夜9時以降は照明を暗めにすると、今晩から寝付きが良くなるでしょう。
オール電化でも
滋賀の青山地区で講演したときのことです。
私が「夜9時以降は脳を興奮させると眠りが悪くなります」と話をすると
50代の女性がこう話されました。
「最近家をリフォームして、オール電化にしました。
しかし、そのころから寝付きがなぜか悪くなりました。
不思議に思っていましたが、今日の話でよく分かりました」。
この方は、夜10時ころになると忙しくなります。
なぜかというと、オール電化にしたので、
深夜電気をうまく使うために、湯沸かしや洗濯機のタイマーを入れたり、
翌朝の電気炊飯器に時間をセットしたりと、
家中の機器を設定するのにとても神経を使うとのことでした。
寝る前に、
頭を興奮させると人は気持ちが落ち着くまで眠ることはできません。
この女性の場合も、電気代を安くしようと思うあまり、
逆に眠りには悪い影響を与えていたのです。
「便利にするのもほどほどにしておかないといけませんね」
としみじみと話されていました。
リフォーム業の方に提案したいのは、
昼間は明るく快適に活動できる環境が大切ですが、
夜9時以降は、少し暖色系の暗めの環境で、
体が自然にリラックスできるように、
睡眠を考えたりフォームをお勧めすることです。
健康増進にもなり、感謝されると思います。
「出典:宮崎総一郎 『全国商工新聞 』2013年2月11日」