不眠症の治療では、
まず不眠の原因や種類に基づいて薬物療法以外の治療法を行います。
不眠が内科や精神科疾患による場合は、原因疾患の治療を優先します。
次に、睡眠習慣や日中の仕事、運動、食事などの生活リズムが不適切なら、
その是正に勧めます。
子どもや若い人の不眠では、朝食を抜く人がいます。
バランスのとれた食事を規則正しく、
家族そろって食べることで不眠症が改善することもあります。
家族団らんによる安心感も不眠症治療で重要な課題です。
不眠症の人は睡眠に対するこだわりが強く、睡眠時間や睡眠の質について、
自分の睡眠を実際より過小評価する傾向があります。
睡眠時間や就床時間などについても
「睡眠はこうあらねばいけない」と思い込んでいる人もいます。
日中の生活で眠気や支障が強くなければ
「この程度でもよいや」と楽観的に気持ちの切り替えも必要です。
また、早寝は困難なので早起きに努め、朝日にあたり、
就寝前四時間のコーヒーやお茶などのカフェイン摂取を避けましょう。
不眠症の薬物療法には睡眠薬だけでなく、
抗うつ剤、抗不安剤、鎮静剤なども使用されます。
睡眠薬か抗うつ剤や安定剤を使用するかは不眠の背景を考慮して決められますが、
医師の好みや国による違いもあります。
薬の効果について強い、弱いとの表現をよく耳にしますが、
大切なのは薬の強弱ではなく、その人に合っていて効果があるかです。
また、睡眠薬を続けるとぼけるとか、
依存症になって効かなくなると誤解している人もいます。
現在の薬物は初期の古い性質の睡眠薬と違い、
医師と相談して適切に使用している限り問題は少ないといえます。
逆に高齢になるにしたがって睡眠薬は効きすぎることが多く
転倒の原因ともなりますので、減量や中止も期待できます。
睡眠薬は期待された効果に達するのに、一~二週間かかることもありますので、
焦らずにきちんと処方通り、服用することが大切です。
医師も処方に際して、常に副作用に注意し必要最小限の量にとどめるよう努めます。
不眠症の治療はある意味では、睡眠に対する満足惑を追求することです。
どのような薬物もすべての人に100%の満足を与えることは不可能です。
睡眠薬の効果と限界を認識しつつ、
前向きに生きようとする姿勢が一番良い治療となるかもしれません。
出典:名嘉村 博 「良い眠り 良い人生 21」 『琉球新報』 2008年9月22日