テレビと睡眠

テレビを夜遅くまで見ていると眠れなくなり、途中で目の覚める原因になります。
あるとき、町の家電販売店のおやじさん(65歳)が、
「寝つきが悪くいつも30分以上かかります。夜中に何度も起きてトイレに行きます。
ぐっすり寝た気がしなくて、昼間も眠いです」と相談に来られました。
寝る前の状況について聞いてみると、寝室でテレビを眠くなるまで見ているとのこと。
そこで、9時以降は寝室を暗めにして、
テレビを止めてラジオを聞くようにしてくださいとお願いしました。

1か月後、とても元気な表情で現れました。
「寝ながらテレビを止めたところ、寝つきが良くなりました!
この通り15分くらいで眠れるようになりました。トイレにも一度も行きません。
途中で起きなくなったので、朝に熟睡感があります!昼間も眠くありません。
今までは、各部屋にテレビを3台置いていたのですが、すべて片付けました。
実は私は皆さんにテレビを売っているのですが、
睡眠にとってテレビは良くないことを実感しました ハハハ・・」

 

メールも控え

 

玲子さん(28歳、仮名)も日中の眠気、倦怠感に悩まされていました。
さらに、いびきや無呼吸もあるとのことで睡眠外来を訪れました。
眠気の自己評価(表)点数は14点とかなり高値でした(正常は7点以下)。
睡眠時間は、平均6時間程度ですが、休日は1日中寝ていました。
週に3~4日は寝つきが悪く、30~60分ほどかかることもしばしばでした。
話を聞くと、眠る前に1時間程度友達と携帯メールのやりとりをするのが常とのことでした。
そこで、まずは携帯メールを少し控えるように指導しました。

以前は深夜1時ごろまで携帯メールしていましたが、12時までに控えました。
メールをやめて間もなく、寝つきが良くなり、ぐっすり眠れるようになりました。
これまで眠気や倦怠感のために断っていた外出もできるようになりました。
眠気の点数も7点と改善し、友達との旅行にも行けました。
その後引き続き、夜の携帯メールを中止していますが、
とても元気になったと本人が話されています。

 

朝一番で爽快

 

子供の睡眠に詳しい高知大学の原田先生からお聞きした話です。
1988年頃までは中学生から大学生まで、男性よりも女性の方がはっきりと朝型でした。
ところが2000年の調査では男女差が見られなくなりました。
その原因の一つに携帯電話の普及があげられるとのこと。
携帯でのやり取りに時間をさくために夜型となり、睡眠時間が短くなっていると考えられます。
中でも女子中学生の睡眠不足が増えています。
中学生や高校生の女子にとって、携帯でのメールは仲間とつながる大切なツールで、
返事をしないと仲間外れにされることもあり夜遅くまで必死に返事を返す子もいるとのこと。
いまやテレビや携帯、パソコンは今や私たちの暮らしと切り離せないものになっています。
夜更かししてテレビを見たり、パソコン・携帯メールを使う人が多いのが現状です。
しかし夜に小さなモニター画面に集中すると脳が興奮して眠気がなくなります。
さらに、睡眠中の中途覚醒や熟眠感のなくなる原因にもなります。
では、いつテレビや携帯を見ればよいのでしょうか。

それは朝です!
朝は、頭がぼーっとしていますが、脳に刺激を与えることで覚醒につながります。
ニュースを夜に見なくても、朝一番に見れば最新の情報が得られるでしょう。
夜に脳に良くないことは、朝には脳を目覚めさせるのに有効なのです。

 

「出典:宮崎総一郎 『全国商工新聞 』2012年9月3日」


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