子どもの良い寝付きには

沖縄の仲西先生からお聞きした話です。

「2年前に睡眠健康指導士養成講座を受けてから、家の照明の使い方を変えました。
それまでは、蛍光灯のみでとても明るくしていましたが、
夜に明るい光を浴びると寝つきが悪くなるとお聞きしたので、
さっそく夕食が終ったあと蛍光灯を消して白熱灯の赤みのある間接照明にしました。
そうすると、子どもが早く眠るようになりました。
子どもは4歳と2歳ですが、それまでは2人で遊んでなかなか寝ませんでした。
しかし、間接照明にして絵本を読んでいると自然に眠るようになり、その効果に驚きました。
あと、寝室も真っ暗にしました。
それまでは、豆電球をつけて寝かしていたのですが、
朝の寝起きが良くないことが多々ありました。
子どもたちは、最初のうちは暗いのを怖がっていましたが、
強制的に暗くしていると1週間ほどでなれました。
真っ暗いなかで寝かすと、寝起きもよくなりました。
私たちも、暗めの環境にいると自然に早く眠れるようになりました。
光の効果のすごさに驚いています!」

 

睡眠時間の減少

 

国民生活時間調査(NHK放送文化研究所)では、
1960年には平均8時間以上はあった日本人の睡眠時間が、
2010年には7時間14分、夜10時までに寝ている人は、1960年には60%以上いたのに、
2005年にはたったの24%になってしまいました。
夜型社会になった原因のひとつにこの蛍光灯で明るく照らされた環境が                    影響しているのかもしれません。

ここ20年で私たちの体内時計に関して多くのことがわかってきています。
体内時計は脳の奥深いところ(視床下部)にあります。
この時計は約24時間のリズムで、
私たちの身体を昼の活動に適した状態と夜の休息に適した状態に切り替えています。
網膜とつながっていて、目から入った光の情報は体内時計に直接伝えられます。
強い光は体内時計のリズムを変化させます。
朝に強い光を浴びると体内時計のリズムが早まります。
逆に、夕から夜に強い光を浴びると体内時計が遅れ、
眠くなる時刻が遅くなることが知られています。

 

ホルモンに作用

 

体内時計のリズムを変化させるには2500ルクス以上の強い光が要るといわれていました。
しかし、最近の研究ではそれほど強い光でなくても、
夜に長時間にわたって光を浴びていると、
睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌が抑制されることがわかってきました。
少し明るめの家庭の居間で300ルクス前後ですが、
この程度でも30分以上浴びているとメラトニン分泌が抑制されます。

最近の睡眠と光の研究から、
睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌を抑制しやすい光の波長があることがわかってきました。
具体的には、青色の波長がメラトニン分泌を低下させます。
この波長は白色の蛍光灯に多く含まれている成分です。
逆にメラトニン分泌に影響しないのは赤みの強い電球色です。
電球色は気持ちが安らぐだけでなく、
メラトニン分泌に影響が少ないので寝付きが良くなります。
間接照明のバーにいると自然に眠くなるのはそのせいでしょうか。

現在の私たちの周囲は明るすぎます。
そのことで、体内時計が遅れて寝付きが悪くなっているかもしれません。
皆さん、夜は暗めにして省エネに協力して、自らの睡眠を良くするのはいかがでしょうか。

睡眠や睡眠健康指導士についてもっとお知りになりたい方は、
ホームページ http://www.sasjp.net/をご覧ください。

 

m.z5

「出典:宮崎総一郎 『全国商工新聞 』2012年7月2日」

カテゴリー: 附属高等学校 【講義リスト】