子どものいびき

お子さんがいびきをかいて眠っているときに、
そっとパジャマの前を開いて、胸の動きを観察してみてください。
いびきに伴って、胸がへこんでいるようであれば要注意です。
子どものいびきの原因はほとんどが、へんとう肥大によるものです。
口を開けると、喉ちんこの横に大きく肥大した口蓋へんとうがみえます。
しかし、喉ちんこの後ろ上には、口からは見えませんが、
アデノイドという別のへんとう(咽頭へんとう)があります。
アデノイドと口蓋へんとうがある程度以上の大きさになると鼻詰まりが生じます。

子どもは鼻が詰まっていても、覚醒時には口を開けて呼吸をします。
しかし、眠っているときには、無意識に詰まった鼻で呼吸しようとするために、
いびきとなったり、呼吸がとまる(無呼吸)ようになります。
鼻風邪などによる短期間のいびきは、それほど問題ではありません。
しかし、数か月以上、一晩中にわたる大きな苦しそうないびきが続くようなら、
よく調べる必要があります。

狭くなった気道を通して呼吸すると、胸がへこみます。
毎晩のように胸がへこむような苦しい呼吸をしていると、
胸の中央部がへこんだり(漏斗胸)、突出したり(はと胸)するなど変形します。
いびきや無呼吸、胸の変形、口呼吸などを認めたときには、
耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。

 

生活のリズムも

 

また、いびきがひどくなると、生活リズムの障害としても現れます。
目覚めが遅く、無理に起こさなければならないこと、
2~3時間以上の長い昼寝、眠る時刻の遅いこと、一晩にわたるいびき、
夜中に何度も目を覚ましたり、夜尿などの症状が出ます。
また、落ち着きがない、すぐに怒りやすいなど、
軽度のADHD(注意欠陥・多動性障害)に似た症状を呈します。
重症例では、成長ホルモンの分泌が障害され、体の発育が停滞することもあります。

 

手術で成績向上

 

へんとうは母体からの免疫が薄れる1歳過ぎから発達し、大きくなります。
アデノイドは3~6歳、口蓋へんとうは5~7歳で最大となり、学童期後半に次第に小さくなります。
適切ないびき、無呼吸の治療により、ゆっくり眠れるようになると、
子どもは早い時間に自然に覚醒し、日中は昼寝をせずに遊び、
精神面でも落ち着き、夜は疲れて早い時間に眠るようになります。
夜尿もかなり改善します。

学業成績にも良い効果があります。
アメリカでの調査ですが、小学校1年生で、成績の下位297人を調べたところ、
54名が睡眠呼吸障害でした。
そこで、手術治療を勧めると、24人の親御さんが手術に同意して治療を受けました。
残りの30人は治療を希望されませんでした。
2年生になって、その成績を手術した群としなかった群で比較すると、
治療しなかった群の成績に変化はありませんが、
手術を受けた群では、20%以上成績が伸びていました。
これは、知能が良くなったというより、
よく眠れることで本来の力を出せるようになったとも推測できます。
胸の変形も、手術後の陥没呼吸がなくなることで、かなり改善します。
ただし、5~6歳頃までに治療することが大切です。
睡眠呼吸障害は体の成長に大きく関わっていますから、早めに治療することが大切です。
重症な例ではたとえ1歳以下でも、
手術や鼻からのマスクで気道を広げて無呼吸を治療(CPAP治療)することがあります。

「子どものいびき」についてのホームページをご覧ください。http://www.sasjp.net

 

「出典:宮崎総一郎 『全国商工新聞 』2012年11月19日」

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