睡眠時無呼吸症候群 生活習慣病、深く関係

トラック運転手の大久保さん(37)仮名は、

2年前から運転中に急にふらっとして眠くなるようになった。
幸い事故には至らなかったものの、
ヒヤリとする場面も多々あるため、
心配になって睡眠外来を受診した。
話を聞くと、2年前にへんとう腺の高い熱を出してから、
いびきや無呼吸がひどくなり、
そのころから昼間に眠くなったとのこと。

のどを見ると、
口蓋垂(のどちんこ)の横のへんとうが大きく肥大していた。
シーパップ治療を2カ月試して、眠気は消失したものの、
手術治療を希望したため、入院してへんとうを摘出した。
手術後は、シーパップは不要となって、
眠気がなくなり安全運転ができるようになった。
治療前は、疲れがたまり、
休みの日に子どもの遊び相手をする気になれなかったが、
今は絶好調で、
家族との外出も増え家庭が明るくなったとのこと。

睡眠時無呼吸症候群は、
覚醒時には普通に呼吸していても、
眠ると気道(空気の通る道)が狭くなり、
または完全に閉塞するために苦しそうないびきや、 無呼吸が出現する。
呼吸ができないと、 血液中の酸素が低下し苦しくなって目が覚めることで呼吸ができる。
しかし、
再び眠るとまた気道周りの筋肉が緩み、 睡眠時無呼吸となる。

睡眠時無呼吸の原因としては、
肥満(35%)、下あごが小さい(35%)、
へんとう肥大(20%)、鼻づまり(10%)などのほか、
アルコール摂取、上向きで寝ることなどが、
単独または複合して睡眠時無呼吸を引き起こす。

大阪にある会社のすべての職員について調べたところ、
1時間に30回以上呼吸が止まる重症の無呼吸症候群が14%も診断された。
睡眠時無呼吸症候群では、
無呼吸のためによく眠れず、 そのためさまざまな症状を訴えて、
いろいろな診療科を受診する。
先週紹介した金井さんのように、
意欲低下やうつ傾向で、 心療内科や精神科を受診することもある。
堀田さんのように頻尿やインポテンスで泌尿器科に行く場合もある。
十分な睡眠が取れないと、
交感神経が刺激されて高血圧となるために循環器科を受診するが、
治療を受けても十分に血圧が下がらないこともある。

睡眠時無呼吸があると、
高血圧は2倍、心疾患は3倍、脳血管疾患では4倍の割合で併発する。
周囲の人が迷惑なほどのいびきは、
自分自身にも負担となっており、
また生活習慣病とも深く関係しているので、
一度調べることが大切である。

 

出典:宮崎総一郎 「眠りの不思議22」 『秋田魁新報』 2009年7月13日

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