二十二歳の悠子さん(仮名)は、
事務の仕事をしていますが、毎朝起きることができません。
7時には無理に起きるのですか、
体は眠ったままでまったく動きません。
日中でも、蒲団に入ったらすぐに寝てしまいそうです。
仕事に差し支えるほど眠いので、
福知山にある病院の睡眠外来で相談しました。
先生からは、寝た時間、起きた時間、
眠気の程度を紙に書いてくるように言われました。
一ヵ月後、睡眠記録をみた先生は
「あなたは睡眠不足症候群です。
休みの日に、普段より2時間以上も長く寝ているでしょう。
これは本当の病気ではなく睡眠時間が足りてないだけです。
十分な睡眠時間をとると、治ります」
と説明されました。
しかし、悠子さんは、
夜にはテレビも見たいし、
家事もあるので早くベッドに入ることができないでいました。
ある日、交通事故に遭いました。
ショックで、会社を休み四日間ずっと
家で寝ていました。
五日目に仕事に行きましたが、不思議なことにちっとも眠くなりません。
そのことを先生に話すと、
「言ったとおりでしょう!
あなたは慢性の睡眠不足だったので、
たっぷり眠ったことで、睡眠負債がなくなり眠気がなくなったのですよ」
悠子さんのような場合を、「睡眠不足症候群」と呼びます。
必要な睡眠時間をとらないことで、
睡眠不足の影響が眠気やイライラ、
集中力低下となり、ひいては事故の原因となります。
この病気?はまじめな若い男性サラリーマンに多いといわれますが、
主婦から中年男性まで広い年代で見受けられます。
通勤時間が長いことで、
この睡眠不足症候群になる方も結構おられます。
理想的には、毎日8時間15分ぐらい眠ると、
この睡眠負債がまったくなくなります。
しかし、実際には少し睡眠不足のほうが寝付きもよく熟睡感があります。
睡眠時間は人それぞれですが、
一般的には7時間程度をめやすにしてください。
どこでもすぐ眠れるというのは、
実は睡眠不足の裏返しなのです。
悠子さんは、事故のあとでも
「仕事して帰ってきてすぐに寝るなんて、
人生損していると思いませんか」
と話していました。
現代社会では、ともすれば睡眠が軽視されがちです。
すこしくらいの睡眠不足はすぐには健康に影響しません。
しかし、
長い間、睡眠不足でいると、
健康障害(事故や生活習慣病、精神疾患ほか)という
大きなつけを支払うことになります。
出典:宮崎総一郎 「快眠ライフのために23」 『京都新聞』 2008年9月2日