すべての病気の診断に共通することですが、
最も大切なのは患者さんの訴え(主訴)です。
睡眠障害も訴えの内容を詳しく聞いて(問診)診察することで、
かなりの確率で診断することが可能です。
睡眠障害の診断においては夜間睡眠中の症状だけでなく、昼間の症状も重要です。
夜の症状は不眠、いびき、夜間頻尿、足のぴくつき、むずむず、異常行動など。
昼の症状は過眠、だるさ、疲労感、注意力の低下、気分障害などです。
日中過眠については、日本人は「眠い」と訴えますが、
アメリカ人は「だるい」とか「疲れた」と表現することが多いようです。
同じ症状でも国や文化によって表現に違いが見られます。
睡眠障害の種類に応じてさまざまな問診票がありますが、
これは各疾患の項目で後ほど述べることとします。
睡眠障害では高血圧、糖環病などメタボリック症候群の併発も多いので、
ほかの疾患の問診も大切です。
検査で重要なものは睡眠ポりグラフィー検査です。
ポリグラフィーとは、 複数(ポリ)の項目に ついて検査記録(グラフィー)するという意味です。
英語の略でPSGと呼ばれています。
脳波、眼球運動図、筋電図、呼吸活動、 心電図、酸素濃度、いびきの音、血圧、体温
などを睡眠中に連続的に同時記録します。
快適に眠れるようにと検査室は防音され、 温度調節ができます。
PSG検査により、レムやノンレム睡眠、 睡眠の深さの判定、脳の覚醒回数、
無呼吸回数、けいれん発作、不整脈、 足の筋肉のピクピクの程度などが分かります。
睡販の定義は1957年に確立しましたが、
その後睡眠検査は精神科医や神経内科医が、呼吸は呼吸科医が、
という風に別々に検査をしていました。
1970年前半になって、
睡眠と呼吸を同時にモニターする現在のようなPSG検査が始まり、
70年後半には睡眠時無呼吸症候群などの診断が可能となりました。
PSG検査がなければ、睡眠医療の進歩はなかったでしょう。
日本でもPSG検査のできる施設は 無呼吸症候群への関心の高まりと共に増加の傾向にありますが、
まだ地域差がかなりあります。
医療保険で認められていないため、検査ができない国も多数あります。
最近は無呼吸だけを診断する簡易モニターもありますが、
睡眠障害を全般的に診断し、
重症度の判定も可能な終夜PSG検査の重要性は今後も変わることはないでしょう。
出典:名嘉村 博 「良い眠り 良い人生 19」 『琉球新報』 2008年9月1日