透析患者に多く、投薬で効果

私のお茶の先生からつぎのような手紙をいただきました。
宗敦先生ほ、八十二歳です。
一年前かが、ら腎機能が悪くなり、透析治療をうけています。

「何時頃か思い出せませんが、夜、布団に入ってしばらくすると、
足首から膝にかけてムズムズ、ピリピリするようになりました。
毎晩でなく時々でしたから気にしないでいたら、だんだん強くなってきました。
膝下がムズムズしてビーンとつっぱって体がはねる。
何十回もつづきます」

看護師さんに云うと、
湿布を貼るか湯たんぽをあてるしかないとのこと。
湿布を貼って治ることもありますが、この頃は片方の足に二枚貼っても治りません。
とても不安で、眠れなくて困っています」

この手紙を見て、すぐに透析担当の先生に連絡し、
リボトリールという薬を処方していただきました。

一ヵ月後、次の返事をいただきました。
「頂いたお薬を一粒飲んで寝たら、
しびれもなく朝までぐっすり眠りました。
ここ2、3日は熱帯夜で暑くて何回も目覚めますが、 しびれはありません。
本当にいい先生がいらして下さったもの。
「地獄に仏」とはこのことと、 しみじみ感謝しております。
夜眠れると翌日、元気です。
夏休みも終わって今日からお稽古が始まりました。
私は働く障害者。元気な大病人です。
これからもよろしくお願いします」

宗敦先生のような症状をお持ちの方は一般の3~5%程度、
そして透析治療を受けておられる方では2~3割程度もおられます。
原因はまだはっきり分かっていませんが、
鉄の欠乏や神経伝達物質の機能低下がかかわっているという説が有力です。

症状としては、
「じっとしていられない、むずむずずる、かゆい、痛い、虫がはっているような」
などの何とも表現しづらい感覚が、夜寝る前など、
特にじっとしている時にひどくなって、
足を動かしたり、歩いたりすると、
その時だけはマシになるというものです。
このような症状がある方は生活の質が低下することだけでなく
抑うつになりやすいことが報告されています。

あまり知られていない病気だけに、
治療をうけておられる方はごく一部にすぎません。
夜良く眠れない、
昼間にとても眠いといった症状があり、
夜になると足がムズムズじたり、
寝ているときに脚がピクンピクンする場合には、
ぜひかかりつけの先生または睡眠クリニックの受診をお勧めします。
良い薬もありますので、
この方のように治療をうけてすっきりとされることを期待しています。

 

 

出典:宮崎総一郎 「快眠ライフのために⑳」 『京都新聞』 2008年8月12日


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