練習後の睡眠 飛躍的に技術が向上

昨季、史上最年少の十七歳二カ月で一億円プロゴルフプレーヤーになった
石川遼選手の母親の言葉が、ある雑誌に紹介されていた。
それによると、石川選手は自分自身に何が大事かを知っていて、
午前五時に起床し午後八時には就寝するのだという。

ヒトが眠っている聞に、
閉じたまぶたの下で目玉が上下左右にぐるぐると動いているときがある。
その時に起こすと、ほぼ例外なく夢を見ている。
この状態がレム睡眠で脳は部分的に活動している。
一方、ノンレム睡眠では全般的に脳は低活動となる。

夢の役割は起きている聞に見聞きした情報を整理し必要なことを記憶、
無用な情報は消すことと考えられている。
五感から取り入れたすべての情報を記憶していると、
コンピューターのハードディスクと同様に、
すぐに記憶容量がパンクしてしまう。
次の日により良く活動するために、
レム睡眠は必要不可欠だ。

最近の研究では技能練習後に睡眠を取ると成績が飛躍的に向上すると報告されている。
その一例がテンキー操作。
できるだけ正確にキーをたたく課題に取り組み、
その後起きていた場合と睡眠を取った場合で成績を比べた研究で、
Aグループは午前十時に練習、
午後十時にテストを行ったが有意な成績向上は認められなかった。
しかし、一晩寝た翌朝十時のテストでは成績が20%以上アップした。
Bグループは午後十時に練習しただけで眠り、
翌朝十時に課題に臨んだ。
すると、Aグループと同様に成績が向上していた。

運動技能の修得には十分な長さの睡眠が必要で、
六時間以下では向上しないと分かっている。
学習後に眠ると、記憶の向上はさらに四日間続くとの報告もある。

石川選手は練習後にたっぷり寝ていることが成功の秘訣と推測できる。
受験シーズンに入ったが、
勉強後に十分な睡眠を取ることが試験対策となりうる。

 

出典:宮崎総一郎 「眠りの不思議1」 『秋田魁新報』 2009年1月26日


カテゴリー: 附属高等学校 【講義リスト】