治療を受ければ
睡眠博士は滋賀医大に移る前は、
耳鼻咽喉科医として鼻づまりやいびきと不眠の関係を研究してきました。
特に子どもの場合、へんとう(いわゆるへんとう腺)が大きくなると、
いびきをかくようになったり眠っているときに呼吸が止まってしまう
睡眠時無呼吸になったりします。
いびきのひどい子どもは寝起きが悪く、無理に起こすこともたびたびです。
眠りが足りていないため、2時間以上も昼寝をし、そのため、
夜眠る時刻が遅くなったりもします。
眠りの質もよくなく、深く眠れずいびきをかき続け、夜中に何度も目覚め、
夜尿をすることもあります。
そして、昼間は元気がなくすぐに怒ったり、
攻撃的な行動に出たりすることもあります。
こうした場合の治療方法として、へんとうの切除があります。
その結果、空気の通り道が確保され、いびきもき苦しそうな呼吸もなくなります。
このように適切な治療が行われると、体内時計が正しく機能するようになり、
夜に十分眠り、朝は自然に目覚めます。
もちろん昼寝もなくなり、晴れた日は屋外でたっぷり遊べます。
そうすると昼間の疲れで、夜は早い時間に自然に眠くなります。
眠そうで元気のなかった顔が、健康的で明るい笑顔になります。
感情をうまくコントロールできず、怒りっぽくイライラしがちだった子どもは、
性格も落ち着きます。
昼間の活動が活発になると、落ち着いて授業を受けることができ、成績も向上します。
睡眠博士は、そうした子どもたちをたくさん見て、
医師としての喜びを感じてきました。
今までの連載をお読みになってお分かりのように、
日々の暮らしの中で、原因のよく分からない不快感、すぐれない気分、
慢性的な疲労などに悩まされているとしたら、
それは質の良い眠りができていないことにあるのかもしれません。
先にお話したように、睡眠に問題のあった方々で、
治療により心身に大きな改善が得られた例を数多く見てきました。
そのほんの一部を紹介します。
「コーヒーを飲む習慣をやめたことで睡眠がよくなり、
血圧が10mm/Hg以上も下がって高血圧が改善した。
正しい睡眠をとることで、夜の過食など生活の乱れがなくなり、体重が減った」
「睡眠時無呼吸症候群の治療を開始して、
うつうつとした気分や日中の眠気が消えて、熟睡感が得られるようになった」
「眠る前の深酒をやめたことで、睡眠時の無呼吸やいびき、
中途覚醒が改善し、気持ちよく目覚めるようになった。
少し長く(30分程度)睡眠時間を増やしただけで、朝寝坊や仕事中の強い眠気を解消した」ーなどさまざまです。
正しい知識で良い眠りをHP上に睡眠大学を開設
人材育成に尽力
睡眠博士は現在、大学病院で睡眠障害の診察を行う傍ら、全国各地で話をしたり、
一般向けの本を記すことを通して、睡眠に関するさまざまな情報を提供しています。
また、睡眠博士が理事を務める日本睡眠教育機構では、
睡眠健康指導士の養成講座を開講し、よい眠りを広めるための人材を育成しています。
睡眠についてもっと知りたい方々のために、睡眠健康大学を開設しました。
(http://sleep-col.com/)
また、気軽にウェブ上で挑戦できる睡眠検定を目下準備中です。
このように、睡眠に関するさまざまな活動を行っている理由は、
一人でも多くの人に眠りについて正しい知識を持っていただき、
よい眠りを実践していただきたいからにほかなりません。
「よい眠りで日本が元気になる」ことを願っています。
「出典:宮崎総一郎 『全国商工新聞 』2013年3月25日 」