当睡眠外来を受診した悠子さん(28)=仮名=は
日中の眠気と働蹴感に悩まされていた。
日常生活での眠気の度合いを評価するテストを行ったところ、点数は十四点。
七点以下が正常なので、かなり高値であった。
悠子さんの睡眠時間は平均6時間程度。
月一~二回は一日中寝ていた。
週に三~四日は寝付きが悪く、30~60分ほどかかることもしばしばだった。
眠る直前に一時間程度、
携帯メールのやりとりをしているというので少し控えるように指導した。
以降、悠子さんは自制、
時間も深夜一時ごろまで行っていたのを午前零時にはやめるようにした。
すると、間もなくよく眠れるようになった。
これまで眠気や倦怠感が原因で断っていた外出ができるようになり、
予定通り行動できるようになった。
友人との旅行にも出掛けることができた。
外来を再受診したときの眠気の点数も正常範囲の七点に抑えられた。
引き続き、夜の携帯メールを控えてもらい様子をみているが、
とても朋るく活動的になられた。
以下は、子どもの睡眠に詳しい高知大の原田哲夫准教授からお聞きした話である。
1988年ごろまでは中学生から大学生まで、
男性よりも女性の方が明らかに朝型であった。
ところが、2000年の調査では男女差が見られなくなった。
その原因の一つに携帯電話の普及が挙げられるという。
メールなど携帯でのやりとりに時間を割くために夜型となり、
睡眠時聞が短くなっていると考えられる。
中でも女子中学生の夜型、睡眠不足が増加しているとのこと。
中学生、あるいは高校生の女子にとって、
携帯は友人とつながる大切なツールで、
すぐに返事をしないと仲間外れにされることもあり、
夜遅くまで必死にメールを返信する子もいるという。
携帯電話のほか、テレビやパソコン、テレビゲームは、
今や私たちの暮らしと切り離せないものになっている。
夜に目に入る光が睡眠に及ぼす影響は非常に大きく、
ディスプレー画面の光によって睡眠誘導ホルモンであるメラトニンの分泌が抑制される。
また、小さな画面に集中すると交感神経が活性化されて目がさえ眠れなくて、
ひいては睡眠不足になる。
出典:宮崎総一郎 「眠りの不思議5」 『秋田魁新報』 2009年3月2日