仕事がおわらない!でもタイムリミットは目前。
寝てる余裕はないし・・・しょうがない、徹夜をするか!・・・
と思ってがむしゃらに仕事したけど、だんだん頭がボーとしてきた。
仕事は進まないけど、時計の針はどんどん進んじゃう。
マズイ・・・これじゃ終わらない・・、このような経験はありませんか。
「眠る時間が短い、仕事を熱心にしている」とばかりに、
徹夜も辞さず働き続ける私たち。
睡眠時間を削るテクニックがもてはやされていますが、
寝る間を惜しんでスケジュールを詰め込むことで、
本当に私たちが目指すところにいきつけるのでしょうか。
24時間勤務の害
友人の森国さんと筆者は、
以前より秋田県井川町の消防署にご協力いただき
「睡眠と労働」をテーマにした研究に取り組んでいます。
そこの消防署は、消火や救急出動が大都市にくらべると格段に少なく、
比較的余裕のある労働環境です。
しかし、消防組合の管理責任者である町長さんの話では、
町役場職員は、結構長生きしているのに対し、
消防署員はほとんどの人が、
脳血管疾患やそのほかの生活習慣病で、早く亡くなっているのが目立つとのこと。
それを聞いて、私たちは消防や警察で行われている24時間連続勤務が、
身体のリズムを乱し、生活習慣病やそのほかの余病を引き起こし、
結果として短命になっているのではないかと推測しました。
事実、消防署で管理職になった方々は、今までの24時間勤務から解放されたとたん、
体重が5キロ減り、血圧が下がり、体調がすこぶる良くなっていたのです。
たとえ、出動件数は少なくても、
勤務中は、電話の音ひとつで、仮眠中でもビクッと反応して目覚めていました。
浅くうつらうつらした睡眠状況では、疲労回復はできません。
常に緊張していたので、交感神経が刺激され高血圧ともなっていたでしょう。
夜勤から解放されて酒の量も減ったとのこと。
以前なら非番の時にリラックスするために必ず飲んでいた酒も、
毎晩飲めるようになれば自然に飲まなくなったとのことでした。
無理はしないで
筆者も若いころは子どものいびき研究をするために、
夜はほとんど寝ないで睡眠検査に取り組んでいました。
当時はただがむしゃらに働き、空いている時間に眠る生活でした。
実は睡眠について研究すればするほど、本人は眠れなくなっていたのです。
若さもあり、無理がきくと思っていましたが、
結果は現在高血圧で薬を飲む毎日です。
「睡眠を軽んじていると、働きたくても働けない体になる」
という私の経験から申し上げると、「徹夜はしない」にこしたことはありません。
様々な研究結果から、
睡眠不足の状態では自分が思っている以上にパフォーマンスが低下することが証明されています。
また体に与えるダメージもすぐには目に見えないだけでじわじわと進行していきます。
結局長い目で見れば、
十分な睡眠時間をとった方が体調も万全になって、効率も上がるのです。
とはいえ、スピードが求められる現代社会では、
眠らずに目の前の仕事をしなければならない状況に陥ることもあります。
そんな「どうしてもがんばらなくてはならない」場合に、
ダメージを最小限に抑える方法について、次回からご紹介します。
ただし、根本的な解決策はあくまでも徹夜をしないよう、
睡眠の重要性を理解し日頃の仕事のやり方を見直しておくことです。
まずやることは、徹夜中に疲れたらたとえ30分でもよいから眠ることです。
その後の作業能力、注意力、安全性が格段に回復します。
詳細は、森国さんとの共著「どうしてもがんばらなくてはならないひとの徹夜完全マニュアル」
中経出版 2012をご参考にしてください。
「出典:宮崎総一郎 『全国商工新聞 』2012年7月23日」