小児にもある睡眠障害

今回から睡眠障害に入ります。
以前は睡眠障害といえば、単に不眠症を意味しました。
睡眠学の進歩とともに範囲は拡大しています。最新の国際分類を次に示します。

n.r18

 

①不眠症
②過眠症
③睡眠呼吸障害
④概日睡眠リズム障害
⑤睡眠随伴症
⑥睡眠関連運動障害
⑦その他の睡眠障害
⑧小児科領域の睡眠障害
などです。

 

不眠には寝付きが悪い入眠障害、何回も目覚める中途覚醒、
早く目覚める早朝覚醒、睡眠時間の割には満足感がない熟眠障害の症状があります。
不眠があり、日常生活に支障を来すようになると不眠症と診断されます。
小児にも不眠症はあります。
本人が不眠を訴えることは少ないのでなかなか寝床に入らなかったり、
一人で寝ることを嫌がったりする場合には、
母親や周囲の人が不眠症の可能性も視野に入れておくことが大切です。

日中過眠とは日中に覚醒や注意力を適切に維持できず、
うとうとしたり寝てしまう状態です。
過眠症とは日中過眠を主訴とする疾患です。
不眠症があると日中過眠を生じやすくなるので、過眠症と不眠症は表裏一体です。
しかし、夜間の睡眠障害(不眠症)や睡眠リズム障害を原図とする
日中過眠は過眠症には含みません。
睡眠時間の量は十分でも日中過眠があるときは睡眠の質が惑いことを意味します。

代表的な疾患として、最も眠気が強いといわれるナルコレプシーや、
原因がはっきりしない特発性過眠症などがあります。
睡眠呼吸障害で最も多いのは睡眠時無呼吸症候群です。
そのほかに換気障害のために、動脈の炭酸ガスが上昇する低換気症候群があります。

概日睡眠リズム障害には、極端に寝る時聞が早い睡眠相先進症候群、
極端に寝る時間が遅くなる睡眠相後退症候群などがあります。
睡眠随伴症とは睡眠中に起こる異常行動で、いわゆる夢遊病の睡眠遊行や、
夜驚症、夢が行動化するレム睡眠行動異常症などがあります。

睡眠関連運動異常症にはむずむず脚、周期性四肢運動障害、
睡眠関連四肢けいれん、歯ぎしりなどがあります。
これらは脳の覚醒を起こすために不眠症の原因となります。
小児には大人と共通する睡眠障害と、
小児に多く見られる障害あるいは特有な睡眠障害があります。

医療関係者や保護者が小児にも睡眠障害があるということを念頭に置くことが、
診断の早道となります。
日本人の四人に一人は何らかの睡眠障害があります。
医療的にも社会的にも影響の大きい領域です。

 

出典:名嘉村 博 「良い眠り 良い人生 18」 『琉球新報』 2008年8月26日


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