子どものいびき治療、どこで

筆者の友人で、愛媛県の八幡浜市で耳鼻科医をやっておられる、
菊池淳先生に、子どものいびきについて寄稿していただきました。
以下はその内容です。

 

小さい顎の子は

 

睡眠時無呼吸症候群、これは文字通り睡眠中に呼吸が止まる病気で、
昼間の強い眠気のみならず、高血圧や心臓疾患、糖尿病の原因にもなるといわれています。
肥満の方に多いのはご承知の通りですが、
私たち日本人の顔の形は、肥満がなくても無呼吸になりやすいといわれています。
それは、顎が小さい(小顎)、下顎が後に下がっている(下顎後退)などが多いからです。
子どもの場合は、大人と違って、ほとんどの原因はへんとう肥大、アデノイドですが、
これらは鼻詰まりの原因になります。

さらに、鼻アレルギーや副鼻腔炎による鼻詰まりでも、
いびき・無呼吸になることがあります。
子どもの無呼吸の症状として、成長や学習の遅れ、情緒の問題(落ち着きがない)などがあります。
日本学校保健委員会の調査では、いびきと鼻詰まりがあるだけで、
「落ち着きがない」「学習意欲が低い」と報告されています。
さて、子どものいびきを治療しないとどうなるでしょうか?
前述のような障害は既に分かっていますが、
実は顎の発育にも影響が出てくることが分かってきました。
つまり、子どものときにへんとう肥大やアデノイド、鼻アレルギーなどで鼻詰まりがあると、
鼻呼吸ではなく口呼吸の習慣になってしまいます。

この結果、顎の発育が悪くなり、
大人の無呼吸の原因である小顎や下顎が後退してしまうと考えられているのです。
私は以前に中高生のいびき・無呼吸の調査をしたことがありますが、
大学病院の睡眠時無呼吸外来を受診した中高生の約40%で顎が小さく、
25%に下顎の後退がありました。
へんとうが大きい割合は約50%で、
鼻アレルギーなどの鼻の病気の割合は約60%と高いものでした。
この子どもたちは、へんとう肥大や鼻アレルギーのため鼻詰まりがあり、
そのため顎の発育が悪くなったものと予想されました。
このことからも、幼少期のいびき・鼻詰まりの治療が大事なことが分かります。

 

専門医が大活躍

 

さて、では子ども達のいびき・無呼吸はどのような治療すればよいのでしょうか?
へんとう肥大・アデノイドについては手術で治りますし、
鼻アレルギー・副鼻腔炎については薬と鼻の処置の治療になります。
これらの治療を行うのは、やはり耳鼻科ということになりますが、
この際に地域の開業医の役割が大きいと思います。
例えば、学校検診でへんとう肥大や鼻詰まりを見つけるのは、
まず耳鼻科の先生ですし、手術が必要か判断できるのも耳鼻科医でしょう。

そして何より重要なのは、これらの治療を行いながら、
子どもが健全に成長して行く様子を、
幼少期から成人まで見守ることができるのは、耳鼻科医ということです。
小児科の先生は子どものときしか診られません。
内科の先生は子どものときのことは分かりません。
勤務医の先生はいつか異動や定年があります。
開業の耳鼻科の先生の役割は、とても重要です。

私の耳鼻科医院は、父親が開業して50年を超えました。
受診される患者さんには4代にわたる家族がいます。
3代目のお孫さんの顔を拝見して顎がしっかりしていることを確認し、
4代目のひ孫が風邪を引いた時は、鼻詰まりを取り無呼吸のリスクが少なくなったと、
ほっとする毎日を送っています。

m.z25

「出典:宮崎総一郎 『全国商工新聞 』2012年11月26日」


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