沖縄の高良さん(48歳、自営業、仮名)は2年ほど前より、
いびきがひどくなり、睡眠中の無呼吸を妻から指摘されるようになりました。
タイマーで計ると、30秒近くも呼吸が停止しているとのこと。
その頃体重が100キロから115キロまで増加していました。
血圧も130 mmHg程度であったものが、220mmHgとなりました。
同じころ、夜間に3回以上もトイレに行くようになりました。
それだけでなく、時におもらしもあるため、泌尿器科を受診しました。
エコー検査等をしましたが、前立腺も含め問題ないとのことでした。
糖尿病もないとのこと。
昼間の眠気はとてもひどく、高速道路でふらっとすることがたびたびでした。
路肩で休んでいると自分のいびきでびっくりして起きていました。
その後、睡眠クリニックのことを知り、受診して睡眠検査をうけました。
その結果、寝ている間にのどがつまって息ができなくなる(閉塞性無呼吸)を、
1時間当たり100回以上認めたとのことです。
血液中の酸素濃度も、正常なら95%以上あるところが、62%まで低下していました。
鼻からマスクで圧縮した空気を送り、
のどの狭窄部を広げることで楽に息のできるシーパップといわれる治療を始めました。
その夜から、トイレに行かなくなり、おもらしもなくなりました。
血圧も正常となり、眠気や頭痛もすっかりなくなりました。
本人は気付かず
最近話題に上ることが多い睡眠時無呼吸症候群は、
いびきや睡眠中の無呼吸、昼間の強い眠気など睡眠の病気です。
この睡眠時無呼吸症候群は年々増えており、
働く世代の男性の14%近くが罹患しているとの報告がされています。
睡眠時無呼吸症候群では、いびきや無呼吸が高頻度に認められる一方、
眠気以外の自覚症状がほとんどありません。
そのため、本人が気付くことが少なく、
周囲の方に言われてしぶしぶ病院に来る方が多いのです。
典型的な症状には次のようなものがあります。
●大きく、苦しそうないびき
●日中の耐えがたい眠気
●夜間2回以上のトイレ
●熟睡感のないこと
●起床時の疲労や頭痛、口内乾燥
●集中力、記憶力の低下、意欲低下
原因はさまざま
睡眠時無呼吸症候群の主な原因は、
肥満によるものが35%、あごが小さいことが35%、扁桃肥大が20%、
鼻閉による呼吸障害や飲酒などその他が10%と推定されています。
肥満は睡眠時無呼吸症候群の重要なファクターで、
やせれば治る、太っているとなりやすいというデータもありますが、
睡眠時無呼吸症候群の人すべてが肥満だというわけではありません。
肥満度が低くても、
あごが小さい人は睡眠時無呼吸症候群になりやすく、
逆に肥満度の高い人でも、
あごがしっかりしている人は気道が広いので睡眠時無呼吸症候群になりにくいのです。
私たちの睡眠外来では、
睡眠時無呼吸症候群であるかないか、
睡眠時無呼吸症候群の重症度はどれくらいかということを、
顔貌も参考にして診断することも行なっています。
あごが発達している人は、あごが前に出て空気の通る気道が広いのですが、
あごが小さい人は、軽い肥満であっても睡眠時無呼吸症候群になりやすいので、
「肥満ではないから」と安心するのは禁物です。
睡眠時無呼吸症候群は、生活習慣病と深い関係があります。
無呼吸がない人に比べて、無呼吸がある人は、
糖尿病が1.5倍、高血圧が2倍、心疾患が3倍、脳血管疾患が4倍罹患するリスクが高まります。
寝はじめの軽いいびき程度なら問題ありませんが、
一晩中苦しそうないびきがある場合は、
耳鼻科や睡眠専門クリニックに相談されてみてはいかがでしょうか。
検査に痛みはありません。
診断は簡単です。
「出典:宮崎総一郎 『全国商工新聞 』2012年11月5日」