不眠症は睡眠の長さや質が不十分な状態が続き、日中に何らかの支障を来します。
睡眠障害の中でもっとも多い疾患です。
日中に疲労や倦怠感、眠気、注意力・記憶力低下、作業・学業能力低下、
気分障害、意欲・活力低下、緊張、頭痛、胃腸障害などの症状が現れます。
いろいろな間違いや交通事故、作業事故なども起こりやすくなります。
有病率は調査方法による違いが大きく、
欧米では4.4%~48%、わが国では成人の約20%との論文があります。
不眠症の訴えとしては、入眠障害がもっとも多く、
次いで中途覚醒と早朝覚醒となります。
持続期間によって一過性(二~三日以内)のものから短期(一カ月以内)、
長期(一カ月以上)に分けられます。
不眠を生じる要因には
①身体要因
②生理要因
③心理要因
④精神疾患
⑤薬物
があります。複数の要因が重なることもまれではありません。
種類としては、心配事や病気など
何らかの強いストレスのために眠れなくなる急性・一過性の不眠があります。
ストレスが解消されるか慣れてしまうと改善することが多いため
適応性不眠ともいいます。
また、実際は眠れているのにも関わらず、
不眠を訴えるものを逆説不眠(睡眠誤認)と呼びます。
寝る時間が不規則、日中に何度も仮眠をとる、
アルコールを乱用するなど不適切な睡眠習慣による不眠もあります。
さて、治療の対象として最も多いのが神経質性不眠です。
完全主義的傾向で神経質な性格の人が、
何らかの原因で一度不眠を経験すると、
これを契機に睡眠に対するこだわりが強くなり、
心理的には不眠恐怖症となります。
何とか眠ろうと努力しますが返って緊張(生理的症状)して眠れなくなってしまうため、
心理生理性不眠とも呼ばれています。
このタイプは、日中の調子が悪いことを強く訴えますが、
昼寝や仮眠をとろうとするとできないことが多いです。
不眠が条件付けされた自分のベッドでは眠れませんが、
ほかの場所となると意外に眠れることが多いのも特徴です。
そのほか、子どものころから始まる原因不明の慢性不眠を本能性不眠といいます。
うつ病や統合失調症などの精神疾患では不眠が主症状のことが多く、
診療に際しては最初に区別して精神科や心療内科などの専門医に紹介します。
睡眠障害の診療では、必要に応じて家族からも話を聞き、
質問表や睡眠日誌などを活用して診断し、
治療計画を立てます。
出典:名嘉村 博 「良い眠り 良い人生 20」 『琉球新報』 2008年9月8日