眠りのメカニズム その1

人間は、目が覚めてから約15時間後ぐらいに眠くなるというメカニズムを持っています。
朝起きた時間で、夜眠る時間が決まるということです。

いくら早く寝ようと思っても、
すでにその日の朝起きた時間によって、眠くなる時間が決まっているので、
早く眠りたいときには、その日の朝に早起きしておくことが大切です。

 

夜早く眠れば

 

滋賀県のある幼稚園で、睡眠のお話しをお母さん方にした時のことです。
アンケートにある母親が次のように書いていました。

「最近、うちの3歳の子どもが早く寝ないので困っていました。
今日先生の話を聞いて、朝起きた時間から計算してみると、
ぴったり子どもの寝ている時間になり、びっくりでした!
明日からは、カーテンを開けて早く起こしてみようと思います」

このお母さんは、たぶんそれまで、                                                      カーテンを開けないで暗い部屋でお子さんを寝かせていたのでしょう。
朝の忙しいときに子どもが起きてくると、わずらわしかったかもしれません。
朝の7時に起きると、眠る時間は7+15=22、午後10時になってしまいます。

プロゴルファーの石川遼選手が高校生の時には、
朝5時に起きて、夜8時に就寝していたと、ある雑誌に父親の話が掲載されていました。
計算がぴったり合いますね。
自然な良い眠りをとっているので、石川選手はすごい成績を上げるだけでなく、
人柄もよく英語も達者なのですね。
ただお年寄りでは14時間程度、若い人では16時間と長くなることもありますが、
平均的には15時間前後のようです。

なぜ15時間かというと、
朝起きてから休まないで脳を使っていると、15時間ほどで機能が落ちてくるのです。
また、眠りのホルモン「メラトニン」も、
朝の光を浴びて15時間前後で体の中に分泌されてくるので、
2つの効果が合わさって眠くなると考えられます。

では、皆さんがふだん寝足りないからといって、
日曜日の朝9時、10時まで寝ていたらどうなるでしょうか?
10+15=25時 と眠くなるのは真夜中すぎになってしまいます。
その結果、月曜日には睡眠不足となり、
マンデーブルーの原因になってしまいます。
月曜日には、交通事故、心筋梗塞等が多いことが報告されていますが、
多分にこの睡眠不足が関係していると推測されます。
週末にいつまでも寝ていることが体のリズムを乱し、健康でなくなる一因にもなるのです。

 

カーテンを10㌢

 

早目に眠るためには、朝に起きる時間が大切なことがわかりました。
それでは、朝に気持よく起きるためにはどうしたらいいのでしょうか?
その方法のひとつが、カーテンを少し開けて寝るということです。

人間は、朝の光が目に入ると、
その刺激が脳や交感神経に伝わり目覚めるという、覚醒のメカニズムがあります。
まぶたの上からでも光が交感神経を刺激して、血圧や脈拍をあげ、
消化管が動き出すようにめざめの準備をするのです。
遮光カーテンで眠っていると、この目覚めの準備ができず、悪いめざめとなります。
目覚めをよくするには、カーテンを最初から10センチほど開けておく、
またはレースなどにして朝の光をとり入れると良いのです。

私の友人で札幌在住の神経内科ドクターの自宅は、まったくカーテンがないそうです。
そのため、3人の子どもたちは、とてもワイルドに元気とのことです。
カーテンのない生活も慣れてしまえば、自然のリズムにあってとても快適とのことでした。
ただ、彼の家の隣は墓地なので、カーテンがなくても困らないこともあるでしょうが・・・。

 

「出典:宮崎総一郎 『全国商工新聞 』2012年9月17日」


カテゴリー: 附属中学校 【講義リスト】, 附属高等学校 【講義リスト】